なかなか出にくい最近の融資の状況


日本政策金融公庫や制度融資に申込んだのはいいものの「希望額をだいぶ削られた」という話を
以前よりもよく聞くようになりました。

数年前から政府系の金融機関の融資は徐々に厳しくなっていたのですが、最近になって、この傾向はさらに加速している感があります。

これは私の事務所に限った話ではあるのですが、自力で融資を受けられたという方に聞き取りをしたところ、政府系融資の出方はおよそ以下のような傾向となっているようです。

    日本政策金融公庫         希望額の6~7割
    信用保証協会付融資(制度融資)  希望額の7~8割

もちろん、これは多少でも融資が出た人に限った数値であり、まったく融資が出なかった方(否決案件)の数は含んでいません。
ちなみに、否決された方の割合はどの程度かといえば、全体の約3割前後のようです。

以上のようにますます厳しくなっている政府系金融機関の融資ですが、これを極限、つまりは希望額の満額にまで高めるためにはいくつかのポイントがあります。
今回はこの点について詳しく解説したいと思います。

 

飲食店融資の場合の例外と注意点


このコラムの第一回目で、創業者が利用できる融資制度は実質的に2つだけであり、そのうち
の一つは日本政策金融公庫の「新創業融資」、もう一つは信用保証協会の保証がついた「制度融資」であるとお話ししました。

これらの2つの融資はいずれも政府が支援するものではあるのですが、そもそもの主旨や機関自体が異なるため、当然にその条件や攻略法も異なります。

つまりこれは、同じ1,000万円を借りるにしても、
まったく同じ計画で申込んだのでは十分な融資が得られない可能性がある」
ということになります。
この点をシッカリ理解しておかないと、日本政策金融公庫では1,000万円の融資がされたとしても、制度融資では大幅な減額や最悪、否決されてしまうこともありえます。

たとえば、Aさんが飲食店の開業資金として次の条件で1,000万円の借入れをするため、日本政策金融公庫と制度融資のそれぞれに申込んだとします。
 条 件
 ・ テナント契約費 200万円
・ 
内装工事費 300万円(前金100万円、清算金200万円)
 ・ 運転資金    500万円
・ 営業許可の取得が必要

飲食店の開業をする場合、保健所から営業許可をとる必要がありますが、日本政策金融公庫では、この営業許可は融資実行後でもOKという扱いになっているのが一般的です。
したがってこのケースでは、Aさんはこの金額の範囲内ならば特に問題なく申込みをすることができます。

しかし、他方、信用保証協会では、融資の対象となるのは「営業許可の取得後にかかる費用」だけとなります。
なので、この場合、Aさんはテナントの保証金や内装工事費については申込みができないということになります
なぜなら、通常、保証金や内装工事費などは営業許可の前に支払うべきものだからです。

このどちらが正しいかといえば、融資の一般的な考えによれば信用保証協会の考えが正しいので、日本政策金融公庫が行っている飲食店の場合のケースではあくまで例外的なものといえます。
したがって、日本政策金融公庫であっても、その許可が建設業のようなものである場合には、そもそも許可が取れていないと受付をしてもらえないのが普通です。(例外として、融資期間内や融資後すぐに許可が取れる見込みがある場合には受け付けることもあります)

飲食業の場合の融資の対象となる範囲の違い

日本政策金融公庫 信用保証協会
融資の範囲 すべての事業資金が対象 許認可等が必要な場合、この許認可等が取れた後にかかる事業費が対象
考え方 建設業等の一般的な許可については、原則、事前に取得しておく必要あり。
ただし、営業許可については事後でもOKな場合あり。
すべての許可は、事前に取得しておく必要あり。なので、許可前にかかるテナント契約費や一部工事費については融資の対象とならない。

ちなみに、日本政策金融公庫と信用保証協会でこのような違いが出る理由は、「事業にかかる資金」の捉え方に違いがあるためです。

日本政策金融公庫では、「営業許可は工事(排水設備や光熱関連)がある程度まで進んだうえでないと、検査ができないので、それを見込んで初めからかかる経費についても融資する」というスタンスです。
一方、信用保証協会では「営業許可といえども、許可の一つであるので、その許可が取れた後にかかる経費のみを対象とする」という考えとなっています。

なので、この例の場合、信用保証協会付融資では、テナント契約費200万円と内装工事費の前金100万円は対象とならず、清算金200万円と運転資金500万円のみが融資の対象になるということになります。

 

同じ内容の事業計画書ではダメな理由


それぞれの融資ではこのような違いがあるため、同じ事業について、同じ1,000万円の
申込みをする場合であっても、日本政策金融公庫と制度融資とではまったく同じ計画ではダメだということになります。

先の例でいえば、日本政策金融公庫については1,000万円の事業計画書を作るのに対して、信用保証協会付融資では700万円の申し込みをする事業計画書を作って提出するということになります。

にもかかわらず、この点を考慮せずに信用保証協会へも日本政策金融公庫と同じ計画を提出したりすれば、当然、その趣旨に合わない部分については減額の対象となってしまいます。
また、事業計画書の書き方についても、それぞれの趣旨に合ったものとする必要があります。


このようにそれぞれの金融機関ごとに定められたルールを理解して、はじめて満額融資を引き出
すことができるのです。

 

満額融資のためのその他の事業計画書のポイント


満額融資のためのもう一つの重要なポイントが「資金が回せる計画となっているのか?」ということです。

事業計画を立てる際に最も金融機関が重視するのは、融資をした後に返済ができるだけの利益が出せるのかどうかということです。

この場合の利益のことを償却前利益といい、次の式であらわされます。
  償却前利益(返済可能利益)  「 税引き後利益 + 減価償却費 」

つまり、この利益が毎月または毎年の返済額を上回っている計画でなければ、融資はできないということになります。

一例をあげると
Bさんが600万円を5年で返済する条件で融資を受けようとします。(ちなみにこの場合の減価償却費は40万円/年と仮定し、利息については考えないものとします。)

そうするとBさんが年間で支払わなくてはならない額は120万円となります。しかし、Bさんには40万円分の減価償却費があるので120万円-40万円=80万円となり、結局、Bさんは年間で80万円以上の税引き後利益を生み出さなければならないということになります。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
税引後利益 80万円 80万円 80万円 80万円 80万円
減価償却額 40万円 40万円 40万円 40万円 40万円
残   額 480万円 360万円 240万円 120万円 0万円


では、単純に年間の計画で80万円以上の税引き後利益がでる計画になっていればそれ
だけで良いのでしょうか? 実はそれは間違いです。

なぜなら、それとは別に「資金繰り」を考える必要があるからです。
この資金繰りとは、商売をする上で必要となる現金の出入りの管理のことを言います。

ここでも、また、例をあげて説明します。
雑貨の販売をしているCさんがおり、入金・支払いとも当月末日締め、翌月末日払いの条件で取引をしているとします。

この場合は、この図でもおわかりになるように、仕入れの支払いはその時から約40日後の5/30にしなければならないのに対して、売掛金の入金は商品が販売できたときからカウントがスタートするので、入金は6/30までないことになります。

この日までにどこからか資金を調達できればよいのですが、もし、この準備ができなければ、Cさんは支払いができないばかりか、このような状態が続けば、最悪、「黒字倒産」ということになってしまいます。

こうならないよう、事前にいつのタイミングでいくらの資金が必要となるのかを把握し、必要なだけの資金を用意しておく段取りをつけること、これが「資金繰り」です。そして、当然のことながら、このことは事業計画書の中にもキチンと反映されている必要があります。

なので計画上、利益は十分に出ているのに支払いができないということにならないように気をつけてください。

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