事業開始まで2ケ月間の準備とスケジュールの見本

日本政策金融公庫

新年度を迎え「これから開業をしよう!」とお考えになっている方は多いと思います。

でも初めて開業をする方にとって、まずはじめの難問となるのが「開業準備」です。

これがしっかりできていないと、オープンに間に合わないだけでなく、その後の経営もメタメタということも・・・

しかし、十分な準備ができていれば、余裕を持って行動できるだけでなく、その後の経営もスムーズに行うことができます。

そこでここでは、「失敗しない開業準備」のやり方についてご説明します。

事業プランの作成

 

 

 

 

開業にあたって最も重要なのが、「事業プランの作成」です。

事業プランというとぼんやりとしかイメージできていない方も多いですが、今後のスケジュールはこの事業プランに沿って進めていくので、実際の作業レベルで細かく確認しておく必要があります。

主に必要となる3つの準備

立てる上で主に必要となるのが、次の「3つの準備」です。

➀  資金に関する準備
➁ 許認可などの各種手続きの準備
③ 人の雇用と開業後のオペレーションに関する準備

 

【資金に関する準備】

資金の準備については
● 自分でいくらの資金を準備できるのか?
● それ以外ではいくらの資金を調達できるのか?
という2点が重要なポイントとなります。

手持ちの資金が必要以上に少ないと、多額の借り入れをしなければならないため、その分、融資の難易度が上がるだけでなく、借り入れ後の返済の負担も大きくなります。

また、資金の調達と支払いのタイミングを間違えると、必要な時に支払いができないということになりかねません。

そのため手持ちの資金の額と借入をする金額のバランスを十分に考慮し、できるだけ負担の少ない計画を立てる必要があります。

 

【許認可などの各種手続き】

事業を始める場合には、それが個人事業であり法人であれ、その形式に見合った手続きが必要となります。

特に飲食店の営業許可のように、オープン前にその許可が取れていないと予定通りの営業が出来なくなってしまうこともあります。

また、融資を受ける場合には、「融資が下りるをまでに許可が取れていなければならない」ということが原則なので、 この点についてのスケジュール調整を上手に行う必要があります。


【人の雇用と開業後のオペレーション】

計画を立てる上で最後に重要となるのが「人の雇用と開業後のオペレーション」です。

自分の希望する人材というのはなかなかすぐには集まりません。
かといって、あせって採用するとその後のトラブルにつながります。

したがって、従業員等の採用は、ある程度時間をかけて行う必要があります。

特に、その仕事をはじめてされる方や、未経験者の方については、戦力になるまである程度の時間も必要となるので、一定の「試用期間」なども 設けた方がよいでしょう。

さらに、人を雇う場合には、労働基準法などの法的なルールも守らなければなりません。

資金の確認と準備

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借入額の目安

開業にあたって安心できる資金の目安は「半分以上の自己資金があるかどうか?」です。

日本政策金融公庫などでは、1/10以上の自己資金があれば申し込めることとなっていますが、借入額が全体の半分を超えると、その後の返済の負担がかなり重くなります。

たとえば、総額1,000万円の費用が必要な場合に、自己資金が500万円ある場合の返済額負は次の通りとなります。

支払元本  10,000,000円 / 84回 119,000円/月
支払利息  10,000,000円 × 2.5%※ / 12月 28,000円/月
147,000円//月

これに対して、借入金が500万円の場合は、この半額の73,500円/月で済みます。

日本政策金融公庫の金利が安いとはいえ、借入額が増えれば毎月の支払いの負担もそれに応じて大きくなりますので、「本当に毎月これだけの金額が返せるのか?」ということを念頭に置いたうえで、借入れをする必要があります。

なお、具体的に「いくらまで借りれるのか?」、「どのように返すのか?」については、「いくらまで借りられる?借入限度の計算法」の記事をご覧ください。

新創業融資制度について

なお、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、法人がこれを利用した場合にはその代表者が連帯保証人にならなくても済みます。

したがって万一の場合が不安という方には、この法人を設立して新創業融資制度を利用することをお勧めします。

ただし、個人事業については、事業者本人が「申込人=連帯保証人」となるため、保証責任を免れることはできません。
参 考 【新創業融資制度】の正しい使い方。すべての項目を完全解説!

各種の届出について

 

 

 

 


事業を始めるときに、個人事業ならば「開業届」、法人の場合には「会社設立登記」が必要となります。

個人事業の開業届については特別な費用はかかりませんが、法人を設立する場合にはその種類によって次のような費用が発生します。

登録免許税 定款認証代 定款印紙税 専門家報酬
株式会社 150,000円~ 50,000円 40,000円 70,000円~
合同会社 60,000円~ 40,000円~

※  電子定款の場合は不要。

最近では自分で設立手続きのできるシステムも充実していますので、これらを利用すれば登録免許税と定款認証代以外はかなり安く抑えることができます。

なお、これらの届出や登記をあらかじめしておかないと、金融機関で口座を作ることができないだけではなく、融資の申し込みにおいても不利となることがありますので気をつけてください。

また、許認可関係では、飲食店の場合の「開業届」が必須となるのは当然ですが、それ以外にも「 食品衛生責任者」の登録も必要ですし、深夜営業する場合には「深夜酒類の提供の届出」なども必要となります。 ※ 調理師等の有資格者については免除。
参 考 飲食店の食品衛生責任者になるには?資格は難しい?

とくに深夜酒類の届出は、店舗の実測や専門的な図面の作成が必要となりますので、十分な時間を持って 準備した方がよいでしょう。
参 考 飲食店の深夜営業の手続きと注意点

その他にも店舗の広さによっては「消防法の届出」が必要となることもありますし、 節税をするのであれば「青色申告の届け」なども行う必要があります。

物件・立地の確認

 

 

 

 

テナントを借りて営業をする場合には、賃貸予定の物件について次のことに注意する必要があります。

● 集客をするうえでの問題(路地、地下、上空階など)はないか?
● 使用する権限の問題(転貸借の契約など)となっていないか?
● 空調や水回りといった設備上の問題はないか?

特に、路面店ではない場合には、どうやって集客するかが重要な問題となりますので、安易に「家賃が安いから」、「外見が気に入ったから」などの理由で決めてしまうと、後々、苦労することになります。
参 考 飲食店の立地・店舗の選び方。融資審査に有利なポイントは?

テナントの賃貸契約手続き

事務所としての使用について

テナントを借りて営業する場合には、家主との「賃貸契約」が必要となります。

たまに賃貸の自宅を利用して開業される方がいますが、その場合に気をつけなければならないのが、「その部屋が事業用として使える仕様となっているか?」ということです。

一般的な賃貸物件は、「住居用」として契約されていますが、その場合これをそのままで事務所に使用するのは契約違反となります。

なので、賃貸物件の自宅が「住居用」となっている場合には、「住居兼事務所」として契約をやり直す必要があります。

特に、事業用としてテナントの賃貸をする場合には、内装工事のやり替えなどが必要となる場合が多いですが、内装工事をする場合には正式な契約手続きを先に結ばなくてはなりません。

その場合には、正式な契約をするまでに保証金や礼金、当座の家賃などを準備する必要があることに注意してください。

法人の場合の移転手続き

なお、法人の場合でそのテナントで本店登記をするようにします。

もし仮に、先に自宅で登記をしてしまうと、そのテナントで賃貸契約をした場合、後から自宅→テナントへの本店移転登記が必要となりますので、余計な時間と費用がかかることになります。

各種保険等の準備

 

 

 

 

 

サラリーマンだった方が事業を始める場合には、各種保険の切り替え手続きが必要となります。

それまで会社の健康保険組合の健康保険に加入していた方は、退職後、14日以内に国の国民健康保険に変更しなければなりません。

また、年金もそれまでの厚生年金から国民年金に加入しなおす必要があります。

厚生年金の資格喪失手続きは勤め先が行いますが、国民年金への加入手続きは自分で行わなくてはなりません。

住民税については、昨年分の収入に対するものが一括で請求されるので、予想以上に大きな額となることがあります。

なので、住民税については、あらかじめ役所に確認するなどして、支払い額を見積もっておいた方がよいでしょう。

融資申込み手続き

 

 

 

 

 

開業にあたり融資が必要な方については、創業者向けの融資を利用することができます。

創業者の方が無担保・無保証で利用できる融資としては、
● 日本政策金融公庫 - 新創業融資制度
● 信用保証協会が保証を行う制度融資の創業融資
の2つがあります。
参 考 【2021年版】2大創業融資(公庫・制度融資)のメリット・デメリット全比較

ただし、いずれの融資についても、一定の自己資金が必要となるので、希望額に見合った自己資金をあらかじめ用意しておく必要があります。

なお、日本政策金融公庫の新創業融資では、希望額に対して1/10以上の自己資金が必要となりますが、一定の要件を満たせる場合には、自己資金がなくても申し込むことができます。
参 考 80%以上の人が知らない!「自己資金なし」でも新創業融資は借りられる!

これらの融資がおりるまでには、申し込み後1ヶ月~1ヶ月半の時間がかかるので、オープン予定日までの時間を考えて申し込む必要があります。

従業員の採用、オペレーション

新しい事業で従業員や、パートを雇う場合には「募集→面談→採用」という手続きが必要となります。

募集については、求人誌やハローワーク などを利用するのが一般的ですが、いずれにしてもある程度の時間が必要となります。

また、従業員を雇用する場合には「労働条件通知書」などの労働基準法に沿った手続きが必要となるので、これらの手続きについても見落としがないかを確認します。

なお、業務のオペレーションについては、従業員の中に何人か経験者がいないと業務を回せなくなってしまいます

そのため、「どのような人材をどのように配置するのか?」、「どの人間にどのような作業を任せるのか?」などを、本人の適性を見極めながら決定します。

オープン日の一週間ぐらい前には 、実際の接客などを想定したオペレーション訓練などもしておく必要があります。

内装・資材等の準備

 

 

 

 


オープン日の1~2週間前までに、内装工事の仕上げや什器食器類などの備品の準備、ユニフォームの発注などをしておく必要があります。

これらについては、それぞれで準備にかかる日数が異なるため、前もって作業ごとにかかる日数を見積り、逆算して発注しておく必要があります。

なお、事前に見積もりを取る場合には、1社だけで決めず、複数の業者からこれを取るようにします。

特に内装工事については、これが終わってからでないと保健所へ営業許可の申請ができないため、工期に余裕を持ったスケジュールを組むようにしてください。

集客準備

 

 

 

 


一般的には、オープンの7日前ぐらいから、チラシまきや地域広告への掲載といった集客準備をする必要があります。

チラシの作成には「デザインの決定→版下作成→印刷」といった工程が必要となりますので、予想以上に時間がかかることもあります。

また、ホームページについては、その中に書く文章は自分で作らなければなりません。
見直しなども含めると意外と多くの時間がかかりますので、早めに準備する必要があります。

スケジュールのプラニング

法人の場合、開業準備の着手~オープンまで約2ヶ月~3ヶ月の時間がかかります。(融資申し込みが必要な場合)

各手続きが前後してしまうと、無駄な時間が生じたり、次の作業に進めないなどということになりますので、スケジュールの作成はこれらの点に注意する必要があります。

なお、以下に飲食店のケースのスケジュールを掲載しましたので、ご参考ください。

飲食店(融資あり)のスケジュール例

■ 事業プランの作成
■ テナントの調査・決定  2021年2月1日
■ テナント賃貸契約締結  2021年2月5日
■ 会社設立手続の申請   2021年2月8日
■ 会社設立手続き完了   2021年2月15日
■ 法人設立届け      2021年2月16日
■ 各種保険の届出              2021年2月17日
■ 改装工事開始       2021年2月20日
■ 融資申請         2021年2月22日
■ 改装工事終了       2021年3月5日
■ 保健所検査予定      2021年3月7日
■ 同上検査取得予定     2021年3月7日
■ 融資実行         2021年3月22日
■ 物品到着予定       2021年3月23日
■ アルバイト訓練開始        2021年3月24日(5日間)
■ オープン           2021年4月1日

 

開業準備チェックリスト

開業にあたっては、以下のチェックリストを使うと準備の漏れがなくなります。

事業プラン関連
■ 事業の戦略と実行手段
■ 製品・サービス
■ 競合調査と優位性、リスクの分析
資金関連
■ 事業全体についてかかる費用
■ 事業開始後3ヶ月分の必要額
■ 自己資金額
■ 借入予定額 全体費用-自己資金額
■ 毎月の返済予定額 借入額/返済月数
設備関連
■ オフィスや店舗は必要か?その賃料は?
■ 必要な設備や備品は?その価格は? 発注〜到着時期に注意
■ 店舗の改修費用は? 特別な工事の必要がないかに注意
賃貸借関連
■ 物件の初期費用は? 保証金、礼金、家賃等含む
■ 契約名義は? 法人か個人か?
登記その他手続き関連
■ 会社の種別
■ 会社名、本店所在地、会社の事業目的
■ 資本金
■ 役員の有無、決算月
■ 税務署への届出 提出期限に注意
■ 国民健康保険、国民年金への切り替えその他
■ 必要な許認可と取得の期間
集客関連
■ どんな集客をするのか? HP、チラシ、メール、sns等
■ 集客にかかるコストと見込み成約率
■ 見込み先のリストの有無
販売・仕入先関連
■ 販売先・仕入先の基本情報
■ 取引の際のサイトや条件 締日、支払日など
雇用関連
■ 従業員等の採用方法とそのためのコスト
■ 採用人数と採用時期、職種、賃金、契約

なお、この中で最も重要なものは集客関連の中の「見込み客リストの有無」です。

これがあれば多少の資金や人手の不足も何とかなりますが、逆に、まったくこれがない場合には0から顧客を見つけていかなければなりません。

そして、多くの店が「結局、見込み客を見つけられなかった」という理由で早期に廃業しています。

したがってこれから開業をする場合には、この見込み顧客リストの作成をまず最初にするように心がけてください。

まとめ

新規で開業する場合には、事前のスケジュールの作成が重要となります。

特に「資金に関する準備」「許認可などの各種手続きの準備」「人の雇用と開業後のオペレーションに関する準備」については計画の柱となりますので、実際の作業レベルを想定した詳細なものを作っておくと、その後の進行が楽になります。

なお、こなすべき各作業については順番があるため、これを間違えると作業が進められない、無駄な空き時間ができるなどということになりますので注意してください。

また、開業が成功するかどうかは、見込み客のリストがどれだけあるかにかかっています。

したがって、開業にあたっては、このリストの作成を最優先にした方が成功率が高まります。

なお、119番資金調達NETでは、新規開業資金の申込みのサポートの他、、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
随時、初回の相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

 

 

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プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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