創業融資の事業経験がないのは、こうしてカバーしよう!

創業融資における事業経験 日本政策金融公庫

創業融資では、その事業をした経験があるかどうかが重視されます。

では、具体的にどれだけの経験があればよいのでしょうか?
また、パートやバイトの経験はこれに含まれるのでしょうか?

ここでは、創業融資に必要な事業経験について詳しく解説します。

創業融資と事業経験は関係あるのか?

事業経験は必要?それとも不要?

日本政策金融公庫の新創業融資を申し込む場合は、最低でも次の3つ条件を満たす必要があります。

☆ 創業の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
☆ 雇用創出等の要件
「雇用の創出を伴う事業を始める方」
「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」
「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」など
☆ 自己資金要件

しかし、この中の「雇用創出の要件」については、具体的に「何年以上の事業経験が必要」とはされていません。また、東京都制度融資の「創業」の場合でも、それは同じです。

では、創業融資に事業の経験は、いらないのでしょうか?

答えは、もちろん「NO」です。
創業融資の申し込みをする際には、「事業経験や職歴はとても重要」な判断材料となります。

以前の新創業融資制度では、その中に
「これから行おうとする事業に関する事業経験が〇年以上あること」
という明確な条件がありました。
この〇年の部分は、はじめは「7年」だったのが「5年」となり、少し前の改正でなくなっています。

なぜ、この具体的な年数がなくなったかについて日本政策金融公庫の担当者に確認したところ
「その経験の具体的な内容を見て判断するため」
という回答がありました。

いずれしても、必要となる経験は半年や1年程度のものでは不十分というのは想像できます。

では、創業融資を申し込む際にどの程度の経験があればよいのでしょうか?

これについては、いろいろな情報を総合すると「3年以上」の事業経験はあった方がよいと思われます。

もちろんこれは絶対的な基準ではありませんが、過去に創業融資で希望額を獲得した方や、公庫担当者の意見などによると、このあたりの数字が妥当ということになりそうです。

具体的にはどんな経験があればよいか?

では、3年以上の事業経験があれば、何でもOKか?といえば、これも少し違います。

創業融資で求められている経験の中身は、技術的な部分だけでなく、経営者しての資質に関するものもあることが望ましいです。

仮にその方が調理専門で〇十年のベテランだとしても、それだけでは経営をすることは困難です。
安定した経営のためには、その他にも接客、仕入れ、お金の管理などの能力も必要となりますし、また、場合によっては、集客やプロモーションの知識、メニュー開発やインテリアいった知識も必要となるかもしれません。

このようにお店を経営していく上では、多岐にわたる経験や知識が必要となります。

日本政策金融公庫でも重視するのはまさにこの点であり、専門的な技術だけでなく、経営に関する知識や能力がある方を高く評価をします。

なので、業務に関する経験の長さはもちろん必要ですが、できるだけ幅広い知識や経験をアピールできた方がより有利となります。

経験がない場合の対応

これから創業をしようというのであれば、ある程度は分野の事業経験があるのが普通でしょうが、それでも「まったく経験がない」もしくは「わずかしかない」という方もいると思います。

「事業経験がない、または少ない」という中で起業するケースしては、次のようなケースが考えられます。

● 脱サラしてFCに参加して起業するケース
● 起業する事業の一部に関する経験しかないケース
● まったく起業しようとする事業の経験がないケース

では、このような方は、起業をあきらめなければならないのでしょうか?

そういうわけではなく、ケースによっては、以下のような方法で経験を認めてもらえるられる可能性が十分にあります。

脱サラしてFCに参加して起業するケース

脱サラしてFCへ加盟し開業しようという方の中には、まったくの未経験者も多くいますが、このような融資をケースでも融資を受けることに成功しています。

その主な理由は「本部の業務研修」です。

この研修がある程度の期間行われ、キチンと中身のあるものであるならば、高い確率でその研修を事業経験して認めてもらうことができます。

しかし、中には、研修とは名ばかりで、数時間の座学だけで済ませてしまっているところもあり、その内容は千差万別ですが、このようなカリキュラムでは、当然、事業経験としては認めてもらいにくくなります。

このようにFCでの開業の場合には、その本部がどこまでしっかりとした研修を行っているかにかかっているといえます。

なお融資の審査では、本人だけでなくFC本部の財務内容や借り入れの状況なども対象となります。

したがって、「そのFCの経営内容は大丈夫なのか?」、「過大な借り入れがないか?」などにも注意してFCを選ぶ必要があります。
参 照  飲食店フランチャイズ。開業融資を受けるテクニックと対策

事業経験が少ない、もしくはまったくなく起業するケース

事業経験が少ない、もしくはまったくなく起業する場合には、さらに一段ハードルが高くなります。しかし、このような場合でも、まったく手がないわけではありません。

そのポイントの1つ目は「他の経験との関連付け」です。

いくら事業経験がないとはいえ、これまで何の仕事もしたことがないという方は、まずいないと思います。

例えば、これまでの主な業務が経理だったとしても、その中で企画や人の採用、管理などにも多少はかかわった、もしくはその知識があるとすれば、それは事業経験といえます。なので、メインでしたことがなくても、これらの経験がある場合には、それらを経験としてアピールすることができます。

そして、ポイントの2つ目が「有能なパートナーの確保」です。

いくら関連のある業務の経験があるとしても、やはりそれだけでは心もとないのは否めません。
そのような場合に強力なサポートとなるのが、「事業経験の豊富なパートナーの存在」です。

たとえば、本人に経験のない業務があるとしても、この部分について経験の豊富な共同経営者や社員を雇って対応できるのであれば、この問題はクリアーできる可能性が高くなります。

しかし、この場合にはそのパートナーの職歴なども提出する必要がありますので、しっかりした経歴の方を選ぶように注意してください。

<飲食店のケースの回答例>
私はこれまで実務としての飲食店勤務はありませんが、退社する2年前から飲食に関する情報収集をし、どんな形であれば自分の理想の店とすることができるかについて、主に経営面での勉強してきました。私は前社では、総務、経理、営業などを行ってきましたが、その経験を活かしたお店作りができると考えています。具体的には、
総務、経理の知識を生かした、仕入れ、記帳、収支の管理、衛生管理。
営業の知識を生かした集客プランの作成と実行、顧客の開拓。
などが可能です。なお、今後は、当然、私自身も実務面での協力もしていきますが、この点については経験豊富な〇〇氏をチーフとして、調理・メニュー開発を担当してもらうこととしています。

このように自分の過去の経験と知識を結びつけるとともに、経験者が対応するので実務部分での不足がないということをいかにアピールできるかが成功のカギとなります。

なお、「アルバイトや派遣での経験」が事業経験として認められるかについてですが、その内容が補助にとどまるものである場合には、それ単独では事業経験として認めてもらいにくいといえます。
しかし、その経験期間がある程度あり、責任ある立場で行っていたのであれば、これについても先ほどの関連付けやパートナーの採用とうまくあわせることにより不足を補うことができます。

 

最近、お客様から相談されたケースですが、その方には事業計経験がなかったため、十分なキャリアのある方を役員にし、日本政策金融公庫の創業融資を申し込んだそうです。
しかし、面談の席で担当者の方からは「(事業経験がない)今の状況では、融資が難しい」と事前のお断りに近いお話があったとのことでした。
このような場合、できるだけ前職と関連付けた形で計画を作るのが普通なのですが、その方は、素直に事業経験がまったくないことを話したそうです。
このように、事業経験がない場合、まったく何の対策もしていないと、経験のあるパートナーがいたとしても、このように評価が大きく下がる可能性がありますので、ご注意ください。

 

事業経験が0で融資に成功したケース

これは私の以前の経験です。

私のお客さんに派遣社員として某製パン会社や建設会社での事務をしていた女性がいました。彼女の勤務歴はトータルでは約10年と長かったのですが、実際にはそれ以外の職種を経験したことがありませんでした。

そんな経験0の彼女が「飲食店を始めたい!」と言い出したのです。

普通に考えれば前職と飲食業には何の関係もありません。
また、プロとして調理をしたこともなく、知り合いの店で2週間程度だけ手伝わせてもらったという経験しかありませんでした。

しかし、以下のような対策をした結果、経営に問題がないことが認められ、日本政策金融公庫と制度融資の双方から満額の融資をうけることに成功しました。

➀ 経理や人事、企画といった以前の経験を最大限に関連付け、経営面での問題がないことをアピールした。
➁ 優秀なパートナーを迎え入れることに成功した。
③ 以前の製パン会社のコネを使い、安い材料の仕入れに成功した。
④ 店舗周辺の立地や住民についての調査を行い、ターゲット層が多いことやPRの方法を考えた。


このように経験がない場合でも、過去の職歴やアイデアをうまく組み合わせることにより、融資審査を乗り切ることが可能となります。

まとめ

創業融資においては確かに事業経験は重要ですが、それがないから行ってすぐにあきらめる必要はありません。

もし、その経験に関する直接的な経験がなくとも、
・ FCに参加してトレーニングが受けられないかを検討する。
・ 自分の前職の経験と関連付けて説明する。
・ アルバイトや派遣などもアピールする。
などの方法を活用すれば、実務経験がないという不利を挽回できるチャンスは十分にあります。
参 照 最新の実例見本で解説! 飲食店創業融資のための事業計画書(創業計画書)の作成

なお、119番資金調達NETでは、新規開業資金の申込みのサポートの他、、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
随時、初回の相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

 

 

                               ※ こちらから電話できます。

 

プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

引地 修一をフォローする
日本政策金融公庫
引地 修一をフォローする
タイトルとURLをコピーしました