せどり経験者が教える。せどりで融資を受けるためのすべての手順とポイント

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最近、「せどり」のために融資を受けたいと希望する方が増えています。

しかし、いくら「せどり」の経験があっても、誰もが融資を受けられるわけではありませんし、「専業か?それとも副業か?」によっても大きく変わってきます

そこでここでは「どんな人なら、せどりで融資が受けられるのか?」、「融資を受けるにはどんな準備が必要か?」や、面談で聞かれやすい質問への対応、せどりで事業計画を作るときの注意点といった、せどりで融資を受ける場合の一連の流れをご説明します。

目次

「せどり」で融資を受けるための条件

「せどり」で融資を受けるためには、「すでに何らかの事業をしていること」または、「これから開業する予定であること」のいずれであることが必要です。

なお、日本政策金融公庫では、副業に対する融資ができないわけではありませんが、せどりによる副業については厳しい目で見られることも少なくないため、ストレートにせどりをするというのではなく、金融機関が納得しやすいビジネスプランを考える必要があります。

せどりで融資を受けるための条件

★ 独立して事業(法人or個人)をしていること。※1
★ 開業前または開業してから2期以内の方。※2
★ 開業後1期以内の場合には、1/10以上の自己資金があること。※3
★ 中古品を扱う場合には、古物商免許があること。

※1 法人の場合には、設立登記迄が済んでいることが原則となります。
※2 2年ではなく2期であることに注意してください。

※3  自己資金の詳しい内容については「80%以上の人が知らない!「自己資金なし」でも新創業融資は借りられる!」をご参照ください。

創業者が利用できる融資の種類

せどりをしている創業者の方が利用できる無担保・無保証の融資としては、次の2つがあります。

無担保・無保証で利用できる主な融資
創業者新創業融資制度(公庫) 創業者向け制度融資(信用保証協会)
事業者通常の事業融資(公庫) 事業者向け制度融資(信用保証協会)

日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫の融資の中で、創業者の方が利用できる無担保無保証の融資は「新創業融資制度」となります。

これは最大で3,000万円までの融資枠がある創業者専用の制度ですが、一定の自己資金が必要などといった特殊な要件があります。
参 考 新創業融資制度の詳しい内容については、「【新創業融資制度】の正しい使い方。すべての項目を完全解説!」をご参照ください。

制度融資の創業融資

「制度融資」とは、都道府県や市区町村などの行政と、公的機関である信用保証協会、それと市中の金融機関の3者がタイアップした形の融資制度で、はじめから信用保証協会による公的な保証がついているという特徴があります。

制度融資にはたくさんの種類の融資がありますが、創業者の方が利用できるのは制度融資の中の「創業融資」となります。
参 考 日本政策金融公庫と制度融資の比較については、「【最新版】2大創業融資(公庫・制度融資)のメリット・デメリット全比較」をご参照ください。

せどりで融資を受ける5つのメリット

せどりのために融資を受けた場合には、次のようなメリットがあります。

1 多額の仕入れ資金を準備できる

「せどり」は、売ったものの資金が回収できてはじめて次の仕入れを行うことができますが、よほど利益率の高い仕入れでない限り、一度に仕入れられる量には限界があります。

また、販売までの時間が長い場合には、次の仕入れまでに時間がかかってしまいます。

しかし、融資を受けてまとまった資金を手に入れることができれば、同じ販売期間であってもその分、多くの利益を手にすることができます。

2 無担保・無保証で利用できる

通常の融資を利用する場合には、ほぼ必ずといってよいほど、担保か保証人のいずれかまたは両方を求められます。

しかし、上記2種類の創業融資は、特別な手続きなしで無担保・無保証で利用することができます。

3 低い金利が使える 

政府系の金融機関では、カードローンやノンバンクと比べて非常に低い金利で資金を調達することができます。

特に、日本政策金融公庫の新創業融資制度などでは、2.41~2.80%/年(2021.10時点)の金利で利用することができます。これは月利で考えると0.2%となるので、月単位で考えた場合、無金利に近い利率での利用ができることになります。

なお、制度融資を利用する場合には、金利とは別に約1%/年程度の信用保証料がかかりますが、金利と信用保証料を合計しても、日本政策金融公庫の金利とほぼ変わらないケースがほとんどです。

4 急に入金がなくなった場合にも対応できる

せどりをしていて怖いのは
〇 ブームが去って在庫がなかなか売れなくなる
〇 競合が増えて利益が出なくなる
〇 違反によりアカウントが停止される
といったアクシデントです。

このようなことが起こると、その回復にはそれなりの時間や生活費などの費用が必要となりますが、少ない資金で事業をしている場合には、これらは致命的なダメージとなります。

しかし、融資を受けてある程度の資金をプールしておけば、これらの事態にも十分に対処することができます。

5 資金繰りが改善する

せどりをされている方の中にはカードを使って資金繰りをしている方が多いですが、その場合にはカードの支払いが来る約1~2ヶ月後までに決済をしなければなりません。

そのため、思うように商品が売れていかない場合には、価格を下げて薄利や赤字でも販売しなければならなくなります。

しかし、融資を受けてまとまった資金があれば、慌てて販売せず、価格が回復するまで待つという手段が取れる他、大量仕入れで価格を下げることも可能となるため、資金繰りを改善することができます。

融資手続きの流れについて

融資を利用する場合の流れや各手続きにかかる期間は、およそ次の通りとなります。

※ 創業融資のケースの目安

申込み時期や金融機関の状況にもよりますが、通常、「融資の申込み」〜「お金が振り込まれる(融資の実行)」までには約1~1.5ヶ月の時間がかかります。またこれ以外にも事業計画書の作成や諸届出のための時間が必要となるため、余裕をもって準備しておくことをおすすめします。

融資を受けるために必要な準備

せどりで融資を受けるためには、最低でも次の3つの準備が必要です。

➀ ビジネスプランを考える
➁ 自己資金を用意する
➂ 古物商免許を取る(中古品を扱う場合)

ビジネスプランを考える

冒頭でもご説明しましたが、日本政策金融公庫や制度融資といった政府系の金融機関を利用する場合には、「せどりである」ということを前面に出したプランでは融資がむずしいことがあります。

そのため、国内外商品の仕入れ・販売などといった、通常の物販ののビジネスモデルとした方が、理解がされやすいといえます。

なお、せどりで副業をするにあたり、副業を認めている会社もありますが、これが認められていない場合には、後日、トラブルとなる可能性があるため、できるだけ会社の許可を取得して始めることをおすすめします。

個人事業で開業の場合

個人事業で開業するためには、税務署への「開業届の提出」が済んでいることが必要です。

また、この届出の写しは、多くの場合で必要となるので、忘れずに控えをもらっておきましょう。

 

法人の場合

法人として開業する場合には、法務局への「法人登記が完了」していることが必要です。

これは、法務局でその法人の登記事項証明書(登記簿簿謄本)が取れるようになっているということを意味します。法人で融資を受ける場合には、この法人登記簿の提出は必須となります。

法人には、株式・合同・合名・合資の4つの種類がありますが、現実的には株式か合同会社のいずれかから選ぶことになります。

また、会社の登記事項証明書の目的欄には、次のような記載がされていることが必要です。

せどりの場合の目的欄の例

◆ インターネットによる小物、その他日用雑貨の輸入・販売
 ※ネットによる販売をする場合
古物営業法に基づく古物商
※ 中古品の仕入れ・販売をする場合

法人・個人のどちらであっても、特に融資審査での有利不利はありませんが、株式会社の場合には20~30万円程度(登録免許税等を含む)の設立費用がかかります。

なお、法人の場合にも、設立が完了した後には税務署や役場へ設立を届け出る必要があります。
参 考 融資に適した法人の設立については、「融資の出やすい会社を作る!「正しい設立手続き」とは?」をご参照ください。

自己資金の用意

通常、創業融資では融資を申し込む条件の一つとして、「一定の自己資金があること」が必須となっています。

最も創業者に利用されている、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、「創業にかかる経費の10分の1の自己資金が必要」となっています。つまり、もし500万円を借りたい場合には、その10分の1である50万円以上の自己資金が必要になるわけです。

しかし、ここで注意していただきたいのが、50万円あれば誰でも500万円を借りられるかといえばそういうことではないということです。

なぜなら、これはあくまでもエントリーをするための最低ラインを決めたものだからです。

それでは、実際に借りられる融資の額はどのくらいかといえば、一般的には「自己資金の3~4倍程度」というのか一つの目安となっています。

したがって、500万円の融資を受けたいのであれば、実際には150~200万円程度の自己資金が必要ということになります。

なお、自己資金がない場合でも一定の要件を満たす場合には、自己資金なしで創業融資が借りられる可能性があります。

 

ちなみに、自己資金の確認をどうやって行うかといえば、これはその自己資金を貯めた通帳の現物を見て確認します。

そして、通帳の過去の履歴を見てその自己資金がコツコツと貯めたものなのか?、それとも一時借りたものなのか?などを判断するわけです。したがって、一時的な「見せ金」などは通用しませんので、ご注意ください。
参 考 詳しい自己資金の内容については、80%以上の人が知らない!「自己資金なし」でも新創業融資は借りられる!をご参照ください。

古物商許可の届出

せどりで中古品を扱う場合には、「古物商許可」が必須となります。

もし、無許可で営業をした場合は、アマゾンなどのアカウントの停止だけでなく、最高で『3年以下の懲役』または『100万円以下の罰金』となりますので、必ず取得しておいてください。

また、古物商の許可は個人事業の場合には個人名義で、法人の場合には法人名義で取得する必要があります。

個人名義で取得した許可は法人では使えませんので、取得の際には間違えないよう注意してください。

なお、古物商の免許がまだ手元にない場合でも、許可の申請中の場合であれば融資の申請はできますが、実際の免許が取得できるまで融資の振り込みは保留となりますし、営業もできません。

せどりと確定申告

正式にせどりを事業としてはじめた後には、開業後の取引について正確な証拠を残して、税務署に届け出る必要があります。 俗にいう「記帳と確定申告」作業です。

中には、事業を開始したのに、「面倒だから」とか「利益が出なかったから」などの理由で申告をしない方がいますが、これは絶対にやめた方がよいです。なぜなら、キチンと申告をしていないとその後に融資を受けられなくからです。

いつから開業したかは、開業届や設立年月日の箇所を見れば明らかなため、申告をしていないような場合には、後日、融資が受けられなくなってしまいます。

また、税務上でも青色申告の特典が受けられなくなる、青色申告そのものが取り消されるなどといったことにもなりますので、事業開始後は必ず記帳と確定申告をしてください。

融資に通らなくなるNGポイント

以下にあげる条件のうち、一つでも当てはまるものがある場合には、融資に通らなくなる可能性がかなり高くなります。

特に家賃や公共料金、ローンの返済についての遅れがある場合には、それだけで融資がお断りとなってしまいます。なので、これらのいずれかに当てはまる方については、キチンとした状況が整うよう準備する必要があります。

信用情報に問題がある

ローンやクレジットの利用などで信用情報に問題がある場合には、融資は受けられません。

信用情報登録機関には全部で3つの団体がありますが、基本的にどれであっても延滞などの事故情報が登録されている場合には、融資の対象とはならなくなってしまいます。また、過去に自己破産や債務整理などをしたことがある方で、その履歴がまだ消えていない方も対象となります。
参 考 信用情報の詳しい内容については、「融資にどう影響する? 信用情報のウソ、ホント」をご参照ください

税金の未納や滞納がある

個人事業主または法人の代表者について、住民税や固定資産税などの税金に未納や滞納がある場合には、融資は受けられなくなります。

最近、家賃・水道光熱費・ローンなどに支払いの遅れや未納がある

過去6ヶ月~1年の間に、家賃や水道光熱費、住宅ローン、その他ローンについて一回でも支払いの遅れ(月飛ばし)や未納がある場合には、融資は受けられなくなります。

これは信用情報に登録されていなくとも、通帳の過去の履歴を見たときにそのような事実があることがわかった場合には、このペナルティの対象となるので、きれいな履歴を作ってから申し込まれることをおすすめします。

ノンバンクなどから多額の借金がある

ノンバンクや金融業者からの多額の借入れがあるような場合には、融資は受けられなくなります。
ただし、それが個人で消費した数十万円程度のクレジットである場合などは、その額が大きくなければ問題とはなりません。

過去6ヶ月以内に融資を申し込んで断られている

一般的には、一度融資に失敗してから6ヶ月以内の再申込みは成功の可能性が低くなるとされています。

ただし、その理由が軽微なものや問題となった箇所の修正ができる場合には、6ヶ月以内の再申し込みでも融資がされることもありますので、そのような場合には金融機関にご相談ください。

融資申し込みの必要書類

融資を申し込む場合には、その融資の種類にあった書類が必要となります。
ここでは、せどりの開業で最も利用されている日本政策金融公庫の新創業融資制度に絞って必要書類をご説明します。

必ず必要となるもの

◆ 運転免許証などの身分証明書(原本)
◆ 借入れ申込証(指定の用紙)
◆ 法人の場合には登記簿謄本(原本:3ヶ月以内)
◆ 自己資金の確認できる通帳(原本)
  ※ 法人の場合には個人の通帳と法人の通帳の両方が必要です。
◆ 賃貸する物件の概要がわかる資料
  ※ テナントを借りる場合に必要。
ただし、必ずしも賃貸契約まで締結する必要はありません。
部屋の間取りや賃料などの条件が記載された物件募集のチラシでもOKです。
◆ 6ヶ月~1年前までの家賃や公共料金の支払いの履歴がわかる資料
  ※ 通帳の記載ですべての状況がわかる場合には通帳だけでOK
    そうでない場合には家賃や公共料金の支払いの控えが必要。

◆ 創業計画書
◆ すでに確定申告をしている場合には、確定申告書の写し

これら以外にも、以下の資料がの提出を求められる場合があります。

◆ 納税証明書
◆ 設備を購入する場合はその見積書
◆ 過去の売上の明細
◆ すでに事業をしていて、決算期から6ヶ月維持用経過している場合には試算表

せどりによる借入れのための事業プラン

せどりのための事業資金の融資を受ける場合には、通常の融資とは異なった注意が必要です。
なぜなら、金融機関によってはせどりを事業として、快く思っていない場合があるからです。

そのため、せどりを理由として融資を受け際には、その内容によっては計画をアレンジする必要があることもあります。

事業ブランの基本ポイント

せどりで融資を受ける場合は、通常の事業プランとは異なるところがあります。
したがって、せどりでの事業プランの作成については、とくに次のことに注意してください。

名目は「仕入れ販売」や「輸入販売」にする。

せどりをしている方が融資を申し込む場合にしてしまいがちなのが、「せどり」や「転売」という言葉を使って事業の説明をしてしまうことです。

せどりや転売行為は、いわば通常の商取引きなので本来ならばコソコソする必要はないのですが、最近はせどりや転売には悪いイメージがついているので、できるだけ使わない方が無難です。

実際に、金融機関でも、これらの言葉についてはよいイメージを持っていません。

したがって事業プランを作るときには、次のように説明した方がよいでしょう。

国内せどりの場合
輸入せどりの場合
OEMの場合
「〇〇製品を中心とした国内販売」
「〇〇国からの輸入販売」
「〇〇国での委託製造および輸入、国内販売」

販売の形態にあった準備をする。

せどりによる事業をする場合には、事業内容にあわせた準備やプランができていることを説明できなくてはなりません。

これらは事業計画書に記載するだけでなく、面談の際にも質問されますので、仕入(輸入)から販売までの流れをキチンと説明できるようにしてください。

 必要な準備
国内せどりの場合「開業届または法人登記」
「仕入れ先・販売先・取引条件・販売見込み」
「過去の販売実績がある場合には、その内容がわかる資料」
「古物を扱う場合には古物商免許の取得」
輸入せどりの場合「上記以外に、販売先業者との契約書または、誰からどんなものを仕入れるのかをまとめたもの」 ※ 契約書当が外国語の場合にはその訳文
OEMの場合「上記に加えてOEMの契約書」

事業経験への対策

創業融資では、過去に同種の事業の経験があるかどうかが、かなり重視されます。

せどりの経験がある場合には、その経験は強みとなりますが、その場合でもできるだけ「せどり」や「転売」をしていたとストレートに説明するのはNGですので、この場合には仕入れ販売や輸入販売をしていたとした方がよいでしょう。

なお、以前に自営でせどりを行っていた場合は、本来、その時点で開業届出を出していなければなりませんが、この提出をしていない場合には、経歴の日付と届出の日付の間にブランクを生じることになってしまいますのでご注意下さい。

〖個人事業・国内販売・経歴ありの例〗

私は平成〇年〇月から主にヤフーやアマゾンといったプラットホームを活用して、〇〇製品を中心とした仕入れ、販売を行ってきましたが、このたび取り扱う商品の種類と数量の拡大のため運転資金として金〇〇円の借入れをすることといたしました。

なお、今回の融資により以下のメリットが得られる見込みとなっています。
・ スケールメリットの拡大による仕入れ単価の低下
・ ニーズに合わせた売れ筋商品の安定確保
・ 資金繰りの安定化による安値販売への対策

 

創業計画書の作成

創業融資の申込みでは、必ず事業計画書の作成・提出が必要となりますが、この計画を作成するときには以下の点に注意する必要があります。

なお、事業計画書の具体的な書き方や記載例については、「事業計画書の成功実例を完全公開!(公庫版)」をご参照ください。

金融機関のフォーマットを使って作成しない

日本政策金融公庫では創業融資のための事業計画書のフォーマットを用意していますが、これをそのまま使って申し込まないようにしてください。

なぜなら、このフォーマットはA4版1枚の非常に少ない記入スペースしかないからです。

私のサイトの記載例をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、もし、十分な内容を書こうとすればA4用紙で少なくとも4〜5枚は必要となるはずです。

ですので、申し込みの際には、この用紙に無理に記入するのではなく、同じ項目について別紙で記入して作成することをおすすめします。

金融機関の計画の記載例を参考にしない。

日本政策金融公庫では、業種別の事業計画書の記載例というものを掲載していますが、これについてもこの通りには作成しないでください。

この記載例では、本来、説明しなければならない項目がいくつも抜けており、事業計画書としては不十分なものだからです。

また、ビジネスプランとしても貧弱な内容のものが多く、金融機関を満足させられるだけの内容とはなっていません。実際、この記載例を参考にして融資を申し込んだ方の多くが融資に失敗または不十分な結果となっています。

事業計画書を作成する場合には、これではなく実際に融資が出た計画を参考にしてください。

ビジネスプランは物の流れとお金を中心にする

創業計画におけるビジネスプランを作るときには「物の流れ」と「資金や利益の見込み」を中心に作成することが重要です。

具体的にビジネスプランとは、次の点が明確になっていなければなりません。

「どこから仕入れて」(輸入先)
「誰を対象に」(見込み客)
「どんな方法で」(使用するプラットホーム)
「どんな条件」(仕入れおよび販売時の条件)

また、資金については次の4点が明確になっている必要があります。

「何のために」(資金使途)
「どこから借りて」(調達)
「どんな条件で返済して」(返済条件)
「どのくらいの利益が出るのか?」(見込み利益)

これらのうち一つでも計画から抜けていると、面談などで追及されるだけでなく、そもそも計画として成り立たないという判断をされてしまうこともありますので、漏れがないよう十分にプランを練ってください。

なお、事業計画書の中には、今後どのように売上げやコストが発生するかといった収支に関する予定を記載しなければなりませんが、これについては6ヶ月後はこのくらいというのではなく、毎月毎の収支の見込みを1年分以上記載するようにしてください。

事業計画書の記載例

私は平成〇年〇月から主にヤフーやアマゾンといったプラットホームを活用して、〇〇製品を中心とした仕入れ、販売を行ってきましたが、このたび取り扱う商品の拡大と販売数量の確保のため運転資金として金〇〇円の借入れをすることといたしました。

なお、今後に見こまれる経費と利益については約〇〇円/年を予定しています。
返済のキャッシュフローについては、事業開始から3ヶ月の間については先行して支払うコストにより若干の赤字となる見込みですが、それ以降についてはコストを上回る利益が確保できる見込みとなっています。

また、貴行への返済については、資金繰りの安定のため当初の6ヶ月については元金据え置きの利息のみの支払いを希望しますが、もし、これが認められない場合でも返済に必要となるキャッシュについては別表の通り確保できる見込みであるため、返済ができなくなることはありません。
※ 詳細な資金計画については別表の通り。また、今回の融資により以下のメリットが得られる見込みとなっています。

〇 スケールメリットの拡大による仕入れ単価の低下
〇 ニーズに合わせた売れ筋商品の確保
〇 資金繰りの安定化による安値販売への対策

売上げと費用の根拠を明確にする

事業計画書の中で一番大切なのは「なぜ、その売上げが上がるのか?」といった根拠を示すことです。

どんなに景気の良い計画を立てたとしても、その根拠がなければその計画は単なる「絵にかいた餅」にすぎません。

この点については、金融機関十分に分かっているので、いかにこの部分について合理的で実現可能な計画を作れるかに融資の成功・失敗はかかってきます。

たとえば、初月の売上げが次のような計画だったとします。

販売単価見込み販売数見込み売上げ
2,000円2,000円1,000,000円

この場合に重要となるのが、なぜこの500個を販売できるかという説明です。

もし、あなたが過去にこれだけの数量の同じ商品を販売した実績があるのであれば、その時の記録を見せればよいだけなので簡単です。

しかし、その商品が販売したことのないものである場合には、この方法は使えませんので、独自にその根拠を考える必要があります。

これについては、未経験のことなので、厳密な意味での証明はできませんが、少なくとも金融機関を納得させるだけの根拠が必要となります。

この部分についてはその人の経験や状況により組み立てていく必要がありますが、ご心配な方は直接、ご相談いただければと思います。

融資の面談について

創業融資では、金融機関や融資の種類を問わず、必ず金融機関による面談が行われます。

通常の面談でよく聞かれる質問とその模範解答については「融資の面談で聞かれた「実例15の質問と模範回答」」でご紹介していますので、こちらをご参照ください。

以下では、せどりの場合によく聞かれるものについて、いくつか例をあげてご紹介します。

せどりの場合によく聞かれる質問

Q.事業の内容はどのようなものですか?

ここでは、冒頭でもご説明したように、できるだけ「せどり」や「転売」というキーワードを使わないようにしてください。

通常のせどりであれば「ネットを利用した〇〇の仕入・販売」でよいでしょう。

販売のプラットホームとしては、アマゾン・ヤフーとなりますが、
アマゾン → 事業主登録をする
ヤフー → ヤフーショッピング
とすることができればなお、安心です、

ヤフオクやメルカリの場合だと、どうしても転売のイメージが強くなるため、アマゾンについては事業主登録をする、ヤフーについてはヤフオクではなくヤフーショッピングで販売するとした方がより転売イメージをなくすことができます。

Q.事業の経験はどのくらいありますか?

これについては、もし、それまでに同様の仕入れ・販売をしていた実績がある場合にはそれを答えますが、販売実績がない場合には、「友人の会社を〇年間手伝ってノウハウを学んでいる」などのように答えるのがよいでしょう。

間違っても、「情報商材で学んだ」とか「コンサルから教わった」などと答えないでください。

 

Q.どのように仕入れ・販売する予定ですか?

これについては、基本的にはアマゾンやヤフーなどのプラットホームの利用が中心になると思いますが、販売については、できれば自販する計画も入れた方が、なおベターとなります。

アマゾンなどは集客力がある、FBAが使えるなどのメリットがある一方、販売手数料がかかる、規則に縛られるなどのデメリットもあります。

しかし、自社のサイトを立ち上げて販売することができる体制があれば、これらのデメリットを解消できるうえに、販路の多様化にもつながります。

したがって、アマゾンなどの集客力を生かしつつ、自販できる体制があった方が審査の評価もよくなりやすくなります。

ただし、自販をするとした場合には、以下の準備が必要です。

◆ 専用のHPを用意する。
◆ 事業計画書の販売計画にもそれを反映させる。
     ※ HPは無料で作成できるものでOKです。
Q.資金繰りや運転資金の使い道についてはどのように考えていますか?

一般的なせどりの場合の資金繰りは、クレジットカードを使って行うことが多いと思いますが、その場合は
● 仕入れ決済 約30~60日後
● 販売入金  販売時から2週間後
となるため、入金の方が早くなるのが普通です。

しかし、運転資金とは、販売入金と仕入決済の間をつなぐ資金(通常は、入金の方が約1~2ヶ月程度遅くなる)であるため、せどりのビジネスでは本来、運転資金の必要はありません。

でも、それでは運転資金を借りる名目がなくなってしまうので、運転資金の使い道を聞かれた場合には次のような名目を考えておく必要があります。

「英儀容するために、家賃や人件費、宣伝広告費などが必要となる。」
「販売する商品の種類や数を増やすので、通常よりは多額の仕入れ資金が必要となる。」
「多数の仕入れをすることにより販売単価の低下が見込める」

なお、このような説明をする場合には、事業計画に「どのような商品をどの程度仕入れるのか?」を明確にしておく必要があります。

Q.この事業は転売ではないのですか?

仕入れたものに利益を載せて販売するのは、すべての商売の基本ですから、このような聞き方をしてくることはないと思いますが、もし、聞かれた場合には次のように答えればよいでしょう。

確かに弊社ではネット上のプラットホームを使った販売であり、外見上は転売との差はわかりにくいですが、転売は品薄の商品を買い占めて高値で売るのに対して、弊社では世間のニーズに応じた商品を安定的に供給することが目的であり、この点で一過性の利益を目的とする転売とは違います。

なお、OEMの場合には、そもそもが他社商品ではなく、自社製造の商品なので、もし、OEMの場合ならこの点を強く主張しましょう。

融資の連帯保証人にならなくてもよい方法

これはあまり知られていないのですが、日本政策金融公庫の新創業融資制度を法人で申し込んだ場合には、代表取締役の方が連帯保証人とならなくてよいこととなっています。

個人での申し込みについては、このような特例はありませんので、もし、個人で開業するか?、法人にするか?を迷っている場合には、この点も大きな判断材料としていただければと思います。

ただし、法人を設立する場合にはキチンとその後の融資のことわ考えた中身にしておかないと、融資が不利になったり、余計な費用がかかったりしてしまうことがあります。

融資の資金を2倍にする方法

日本政策金融公庫の新創業融資制度では、実際に融資が受けられるのは自己資金の3倍程度までとなっています。

そのため、自己資金の少ない方の場合には、あまり多くの融資を受けられないという現実があります。たとえば、自己資金が100万円の場合は、ざっくりといえば300万円程度が限界といえます。

しかし、ある方法を使うことにより、この額を最大2倍にできる可能性があります。

それは「日本政策金融公庫と制度融資を併用する」ことです。

制度融資とは、国の信用保証協会と都道府県または市町村といった行政、市中の金融機関がタイアップをして融資をする制度ですが、これは日本政策金融公庫と別の機関なので、制度融資と日本政策金融公庫の申込みは併用することができます。

とはいえ、そもそも別の機関であるため、融資の申し込み先やタイミング、事業計画書の内容などが異なり、単純に公庫と同じ計画を作ればよいというわけにはいきません。

また、状況によっては信用保証協会の利用ができない方もいますので、詳しくはお問い合わせください。

まとめ

以上のようにせどりの事業で融資を受ける場合には、多少、通常の販売とは違ったテクニックなども必要となってきます。

取りこぼしがないよう、まずは以下の点ができているかをしっかりとご確認ください。

◆ 無担保無保証で利用できる代表的な融資の種類としては、創業者では創業融資・新創業融資制度・制度融資、通常の事業者ではコロナ融資・担保を不要とする融資などがある。
◆ 創業者がせどりで融資を受けるためには、最低でも「事業者となること」、「1/10以上の自己資金があること」、「古物商免許を取ること(中古品を扱う場合)」が必要。
◆ 申込人について、「信用情報に問題がある」、「税金の未納や滞納がある」、「過去6か月以内に水道光熱費・家賃などに支払いの遅れや未納がある」他などの事由がある場合には融資を受けるのが困難になる。
◆ せどりで融資を受ける場合の事業プランについては、「名目は「仕入れ販売」や「輸入販売」にする。」、「販売形態にあった準備をする」、「事業経験への対策をする」ということに気をつけて作成する。
◆ 創業計画書を作成する場合には、「金融機関のフォーマットを使って作成しない」、「金融機関のフォーマットの内容を参考にしない。」「ビジネスプランは物の流れとお金を中心にする」、「売り上げと費用の根拠を明確にする」という点に注意する。
◆ 融資の面談については、想定される質問に対してすぐに答えられるようにしておく。
◆ 日本政策金融公庫の新創業融資制度は、法人が申し込んだ場合には、代表取締役が連帯保証人にならないことができる。
◆ 運転資金の融資を増やしたい場合には、日本政策金融公庫と制度融資の両方に申し込むことによって、最大2倍できる可能性がある。

なお、119番資金調達NETでは、融資の申込み以外にも、せどりで融資を受けたい方へのサポートを行っています。

また、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
随時、初回の相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

 

                               ※ こちらから電話できます。

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プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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