事業をはじめるときに、投資金額が大きくなりやすいのが「設備」の購入資金です。
そのため、銀行では設備資金の融資には特に慎重となります。
しかし、設備資金の融資の場合には、その借り方や返し方に大きな違いがあるため、運転資金と同じ感覚で申し込んでしまうと、融資が出なかったり、大幅な減額となってしまいます。
そこで今回は、「設備資金とは?」、「運転資金との借り方の違い」、「返済についての考え方」について詳しくご説明します。
設備資金とは?
設備資金の概要
「設備資金」とは、「資金使途」つまり、どういった用途のために使うのか?といった点からみた場合の資金の種類のことをいいます。
具体的な設備資金としては
「不動産や車両、什器といった、事業に必要となる設備を購入するための資金」
がこれに該当します。
設備資金は創業の時だけでなく、設備の老朽化や改良のための買い替えなどといったときにも必要となります。
※ 運転資金については、融資の基本。「運転資金」の融資の獲得法について
運転資金との区別
運転資金と設備資金の区別の仕方ですが、一般的に、設備資金は減価償却のできるものがその対象となります。※ 土地の購入など一部のものを除く
しかし、融資の申込みでは、減価償却できるものであっても安価な備品(20万円程度以下のもの)で一括償却できるものについては、運転資金として扱うこともあります。
また、テナントを借りた場合の保証金など、地域によって取り扱いの異なる場合もあるため、不明な場合には金融機関にご確認ください。
設備資金の特徴
設備資金の投資には、次のような特徴があります。
◆ 投資金額や融資額が大きくなりやすい。 ◆ 期待した効果や性能が得られない場合がある。 ◆ 返済期間が長くなりやすい。 ◆ 長期的な視点での融資審査がされる。 |
なお、「長期的な視点での融資審査がされる」ということについてですが、運転資金が比較的短期の収支(売上げや入金状況)にもとづき融資がされるのに対して、設備資金では将来にわたった設備の能力や収益力といった観点から融資がされるという違いがあります。
したがって、設備資金の融資では、設備の性能とそれにより生み出される利益が重要視されます。
設備資金の返済原資について
設備資金の返済原資
設備資金では運転資金とは異なり、返済の原資となるのは、
「 税引き後利益 + 減価償却費 」
です。
一般的にはキャッシュフローともいわれます。
この場合の税引き後利益は、設備導入後の利益となります。
なお、設備資金の対象となる設備には、次の二つの種類があります。
◆ 利益を生み出す設備 生産設備や工場など ◆ 利益を生み出さない設備 生産機能のない本社社屋、店舗の改装費用など |
そのため、返済原資もそれぞれで異なります。
◆ 利益を生み出す設備 減価償却費 + 税引き後利益 ◆ 利益を生み出さない設備 税引き後利益 |
返済原資の減価償却とは
このように、一般的な設備資金の返済原資には、「減価償却費」が含まれますが、この減価償却費は、設備の種類ごとに決められた「法定耐用年数」を使って計算します。
たとえば「食料品製造業用設備」の法定耐用年数は10年となっています。
なので、その購入価格が100万円の場合は、定額法(単純にその価格を法定耐用年数で割る方法)での減価償却費は、10万円/年となります。
【 例 】 設備の購入額 100万円/年 減価償却費 10万円/年 ※ 定額法による場合 |
また、設備資金の返済原資は「減価償却費 + 税引き後利益」なので、仮に決算書で税引き後利益がマイナスの場合でも、それを上回る減価償却費があれば返済原資はあるということになります。
【 例 】 税引き後利益 -100万円/年 減価償却費 300万円/年 返済原資 200万円/年 |
この場合の返済原資は、200 万円(-100万円+300万円)となるので、仮に返済期間が10年の場合には200万円×10年の2,000万円までの借入れが理論上は可能ということになります。
ただし、設備資金の融資を受けるときには、注意しなければならないことがあります。
それは、
「融資の返済期間をその設備の法定耐用年数よりも長い期間にしない」
ということです。
もし、融資の返済期間を設備の法定耐用年数よりも長い期間にしてしまうと、償却償却期間が終わった後には、原資である減価償却費がなくなってしまい、利益だけで返済しなければならなくなるということです。(下の例では4年目)
返済期間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 |
法定耐用年数 | 1年 | 2年 | 3年 | ― |
減価償却費 | 100,000円 | 100,000円 | 100,000円 | 100,000円 |
税引き後利益 | 200,000円 | 200,000円 | 200,000円 | 200,000円 |
返済原資 | 300,000円 | 300,000円 | 300,000円 | 200,000円 |
こうなってしまうと、本来、使えるはずの減価償却費が使えなくなるので、かなり厳しい返済となってしまいます。
したがって、設備資金の場合の返済期間は「その設備の耐用年数以内」というのが原則となります。
運転資金と設備資金の流用
なお、もし、
「設備資金として融資をうけた資金を運転資金として使ってしまった場合」
「運転資金として融資をうけた資金を設備資金として使ってしまった場合」
にはどうなるのでしょうか?
この場合には、重大な資金使途違反となりますので、最悪の場合は銀行から資金の返還を求められることになります。
また、それだけでなく、もし、その融資が信用保証協会の保証付の場合は銀行だけでなく、信用保証協会の信用も失ってしまうことになります。
したがって、しばらくの間、その銀行だけでなく信用保証協会を使った借り入れもできなくなる可能性があります。
以上のように設備資金に関する融資の申込みでは、「資金使途」、「設備の必要性や能力」、「返済原資」という部分で運転資金とは大きく異なりますので、ご注意ください
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