「運転資金」の基本。これが説明できればもっと融資が出る!

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皆さんは銀行から融資を受ける時、どうしてますか?
「運転資金〇月分」とか「設備資金を〇〇万円」などという形で申込みをしていることが多いのではないでしょうか?

でも、本当に運転資金や設備資金の意味や中身をわかって使っているでしょうか?

この二つは 「どういう違いがあるのか?」や「どうやって返すのか?」といった部分で大きな違いがあるため、正しい中身を知って申込みをする必要があります。

今回は、まず「運転資金とは?」、「運転資金の融資を効果的に獲得するには?」について詳しくご説明します。

運転資金とは?


「運転資金」や「設備資金」とは、「資金使途」つまり、どういった用途のために使うのか?といった点からみた場合の資金の種類のことをいいます。

具体的な運転資金としては
「家賃・光熱費・人件費などの事業を運営する上で必要となる設備資金以外の資金」
がこれに該当します。

運転資金のための融資にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとしては、次のようなものがあります。

運転資金のための融資の種類

1 増加運転資金
2 つなぎ資金
3 季節性資金
4 納税資金
5 経常運転資金

増加運転資金

増加運転資金とは?

「増加運転資金」とは、「売上げの増加によって、売掛金や在庫が増加したことにより発生する資金」のことをいいます。

一般的に、売上げが増える時には、それにともなって売掛金と、売上げの増加に対応した仕入れの両方が増加します。

このような状態が続くと、
「売掛金の増加」=掛けで販売した分の代金が増え、未回収額が膨らむ
「在庫の増加」= 在庫のために現金化できない期間が長くなる
という事態が発生するため、手元の現金がなくなっていきます。

この時の現金の不足を解消するために、必要となるのが「増加運転資金」です。

増加運転資金の計算

どれだけの資金が増加したのかは、次の式で計算することができます。

 増加運転資金 = 売掛金の増加金額 + 在庫の増加金額 - 買掛金の増加金額

融資の申し込みをする時には、この算定式で計算した額をベースにして、申込みをすればスムーズな借り入れをすることができます。

つなぎ資金

「つなぎ資金」とは、「単発的に発生する業務の原価や材料費などの支払いに必要となる資金」をいいます。

つなぎ資金は、一時的な費用の支払いのための資金なので、手形貸し付けなどの短期の融資が行われます。また、融資を受ける側は、工事費や材料費の見積書を提出して申込みを行います。

季節資金

「季節資金」とは、「季節や一定の決まった時期ごとに発生する資金」のことをいいます。
たとえば、アパレル産業や年末関連のグッズ販売などがこれにあたります。

季節資金は、毎年同じようなタイミングで発生するため、融資の申込みには、銀行にそのビジネスモデルを理解してもらうことが重要となります。

納税資金

「納税資金」は、「税金の支払いのために必要となる資金」です。

通常は、法人税の支払いのために利用されます。この場合には、法人税が発生している=黒字決算、ということなので、銀行としても融資がしやすいものとなります。

ただし、消費税や社会保険料については、預り金であり、原則としてこれが不足することはないため、これらを対象とした融資の申し込みは難しいものとなります。

 

このよう運転資金の借入れには、その用途に合わせた理由や返済の見通しが必要となります。
また、日本政策金融公庫だけの融資だけでは資金が不足する場合もありますが、そんなときは制度融資(信用保証協会付融資)をあわせて利用することで解決できます。
こちらについては、こちらの記事をご参照ください。
参 考 日本政策金融公庫  融資の成功率と獲得額を上げるには?

運転資金の返済について

運転資金を借りるときに、注意しなければならないのがその「返済原資」です。

「返済原資」とは、融資された資金を返済するための元(原資)となるものをいい、銀行は融資をするときにこの返済原資があるのかどうかを必ず確認します。

通常、運転資金を借りた場合の返済原資となるものは、
「売上げを回収したお金」
となります。

掛けで購入・販売をしたものの支払いや入金には一定の期間(これを「支払い・入金サイト」といいます)がかかります。

また、支払いのタイミングは販売のタイミングより早く来るのが普通なので、同じサイトであれば支払いの方が早くなります。

とはいえ、支払いと入金の時間的な差は長いもので3ヶ月までとなりますので、銀行もこれがあまり長い期間のものについては認めないのが普通です。

経常運転資金について

 

 

 

 

経常運転資金とは?

前期の4つが、資金使途に応じた運転資金であるのに対して、これとは別に、資金繰りの健全性を図るために用いられる指標があります。

それが「経常資金」です。

この経常運転資金とは、「通常どおりの経営を継続していくために必要な資金」のことをいい、常に会社に必要な資金であることからこのように呼ばれます。
「正常運転資金」、「底だまり資金」といわれることもあります。

経常運転資金は、下記の式で算出することができます。

経常運転資金=売上債権(売掛金+受取手形+棚卸資産)-買入債務(買掛金+支払手形)

経常運転資金が生じる理由

経常運転資金がなぜ発生するのかといえば、それはかけで販売や仕入れを行った場合、その間の資金が不足するからです。

下の例をご覧ください。

売掛、買掛の期間がともに「当月末締め、翌月末日支払い」のケース

仕入日 買掛金の締日 販売日 買掛金の支払日 売掛金の締日 売掛金の入金日
8/15 8/31 9/1 9/30 9/30 10/31

この例は、よくある「当月末締め払い、翌月末日払い」(売掛、買掛とも)のケースです。
このケースでは、通常、約1ヶ月分(9/30~10/31)の資金が不足することになります。
また、その間に仕入れを行っている場合には、その分の資金も必要となります。

このようにかけで取引を行っている場合には、居酒屋などの現金商売を除き、資金の不足が生じるわけです。
参 照 中小企業の資金繰りの改善ポイント

運転資金と設備資金の借りやすさ

 

 

 

 

運転資金と設備資金のどちらが借りやすいかについては、一般的に運転資金の方が借りやすいと思われることが多いようです。

運転資金は売上げで返済するものであるため、いろいろな経費をその根拠とすることができますが、本当に売り上げが上がるのかということを説明できなければなりません。

一方、設備資金については、「税引き後利益 + 減価償却費 」が返済原資となるため、見積書などによりその必要性や返済の予定を説明しやすい反面、その他の使い道に流用するということはできません。

つまり、単純に運転資金がよいとか設備資金の方が借りやすいという問題ではなく、重要なのはそれぞれにあった借り方と返し方がキチンと説明できるかとなります。

なお、現金商売の場合には、厳密な意味での運転資金は発生しない(売上げをすぐ回収できるため、入金のタイムラグが発生しない)ので、融資を申し込む際にはその点にも注意する必要があります。

119番資金調達NETでは、法人設立手続きの他、借入時の融資額を増やす方法について多くの経験と実績にもとづいたアドバイスを行っています。

また、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
随時、初回の相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

 

 

 

プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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