「親の住んでいた空き家となり処分に困っている。」
「場所が遠いため管理ができず、老朽化する一方だ。」
「このまま持ち続けて問題ないのだろうか?」
現在、親の相続などに伴い空き家になる物件が増えています。
しかし、空き屋は管理が大変なだけでなく、空き家対策法の施行により、そのまま放置しておくと固定資産税の大幅な値上がりや罰金の対象となってしまうことも・・・
この記事では、最近の空き屋の現状と、空き家対策法に関連した対策や処分方について最新の情報をもとに解説しています。
最近の空き家の状況
最新の総務省の統計によれば、h30.10現在での空き家の戸数は全国で約849万戸となっており、総住宅数に占める空き家率は13.6%となっています。
この原因としては、核家族化による世帯数の増加や、高齢者の死亡に伴う相続の発生、中古住宅の再利用が進んでいないなどの理由が考えられます。
とはいえ、ここ最近の5年間における空き家増加率は0.1%増程度あり、以前に比べるとほぼ横ばいの状態となっています。
どんな空き家が増えているのか?
空き家をその内容別に見てみると、アパートやマンションといった賃貸住宅が51%、次に多いのが木造一戸建の28.3%となっており、この2つで全体の約8割を占めていることがわかります。
持ち家と借家では、空き屋がどちらが増えているのか?
さらに、持ち家と借家ではどちらの空き家が増えているのかについては、下記のグラフのとおり、持ち家では5年ごとに約1%の割合で空き家が増えているのに対し、賃貸用の空き屋では約十年前から増加していないことがわかります。
したがって、この傾向が続けば、いずれは一戸建ての空き屋がシェアの大半を占める可能性も考えられす。
「空き家対策特別措置法」とは?
最近のこのような状況の中で、2015年2月26日に施行されたのが空き家対策特別措置法(以下、「空き家対策法」という)です。
この空き家対策法は、増え続ける空き家について、災害による事故の防止や衛生環境の保全を目的として制定された特別立法で、その概要は次の通りとなっています。
空き家対策特別措置法の概要
② 優遇税制が撤廃され、空き家を放置すると固定資産税が最大で6倍になる。
③ 自治体が固定資産税の課税情報を活用して、所有者を特定できる。
④ 命令に違反した場合には、最大50万円の罰金。
➄ ケースよっては、行政代執行による空き家の解体や除去が可能性も。
このように空き家対策法の施行により、行政による調査や強制撤去・罰金の徴収などができるようになりました。
さらに、この法律で定める「特定空き家」に指定され、行政による勧告をされると、固定資産税の優遇が廃止され高額な税金が課されることから、今後については空き屋の相続そのものがリスクとなります。
特に、「相続人が確定しない」、「処分が難しい」などの物件は、特定空き家となってしまう可能性が高いので、早めの対策や処分を検討した方がよいでしょう。
「特定空き家」の定義と処分のフロー
特定空き家の定義
「特定空家」とは、以下のいずれかの状態にあると認められる空き家を指します。
● 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
● 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
● その他周辺の生活環境の保全のために放置することが不適切である状態
ただし、これらの条件に該当するからといって、すぐに何らかの処分がされるわけではなく、調査・指導・助言等を経て、それに従わない場合に固定資産税の優遇の取り消しや罰金などが科されます。
特定空き家に関するフロー
空家を管理せず、それにより保安上の危険や衛生上の問題の疑いが生じたときには、まずは市区町村による調査が行われます。
そして、その上で、実際に危険性や有害性などがあると判断されたときは、空き家の所有者に対して、「助言や指導」が行われます。
この「助言や指導」に従わず、一定の期限内に有効な対策や措置を取らない場合には、勧告や命令が行われますが、さらにこれに従わない場合には、最終的に行政による処分の代行(「行政代執行」)が行われることになります。
なお、市区町村による勧告に従わない場合には、次のような勧告書による勧告が行われます。
勧告書の例
どんな状態だと「特定空家」になるの?
「空家等対策特別措置法」によれば、「特定空家」とは以下のいずれかの状態にある空家をいうものとされます。
○ そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態 ○ 著しく衛生上有害となるおそれのある状態 ○ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態 ○ その他周辺の生活環境の保全のために放置することが不適切である状態 |
しかし、これを見ただけでは、具体的にどのような場合に特定空家になるかが、よくわかりません。
そこで以下では、国が定めた基準に沿って、具体的にどのような場合に特定空家となるのかを見ていきたいと思います。
「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態」
⑴ 建物が倒壊する恐れがあるケース
① 建物の著しい傾斜
「基礎が不同沈下している」
「柱が傾斜している」
② 建築物の構造耐力上主要な部分の損傷
「基礎の大きな亀裂や多数のひび割れ、破損や変形がある」
「土台が大きく腐食、欠損している」
「基礎と土台にずれが生じている」
「柱とはり、筋かいが腐朽、破損または変形している」
「柱とはりにズレが生じている」
⑵ 屋根、外壁等が脱落、飛散する恐れがあるケース
① 屋根ふき材、ひさし、のきの変形、破損等
「屋根が変形している」
「屋根ふき材が剥落している」
「軒の裏板、たる木等が腐朽している」
「軒や雨どいがたれ下がっている」
② 外壁の損傷等
「壁を貫通する穴が開いている」
「外壁の仕上げ材が剥落、腐朽し下地が露出している」
「外壁のモルタルやタイル等の外装材に浮きが生じている」
③ 看板、給湯設備、屋上水槽等の損傷等
「看板の仕上げ材が剥落している」
「看板、給湯設備、屋上水槽等が転倒、破損、脱落している」
「看板、給湯設備、屋上水槽等の支持部分が腐食している」
④ 屋外階段またはバルコニーの損傷等
「屋外階段、バルコニーが腐食、破損、脱落している」
「屋外階段、バルコニーが傾斜している」
➄ 門または塀の損傷等
「門または塀にひび割れ、破損が生じている」
「門または塀が傾斜している」
⑶ 擁壁が老朽化し危険となる恐れがあるケース
「擁壁表面に水が染み出し、流出している」
「水抜き穴の詰まりが生じている」
「ひび割れが発生している」
「そのまま放置すれば著しく、衛生上有害となる恐れのある状態」
⑴ 建築物または設備等の破損などが原因で、次の状態にあるケース
「吹き付け石綿等が飛散し、暴露する可能性が高い」
「浄化槽の放置、破損による汚物の流出や臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている」
「排水等浄化槽の流出による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている」
⑵ ごみ等の放置や不法投棄が原因で、次の状態にあるケース
「ごみ等の放置や不法投棄による臭気の発生があり、地域住民の日常生活 に支障を及ぼしている」
「ごみ等の放置や不法投棄により、多数のネズミやハエ、蚊等が発生し<地域住民の日常生活に支障を及ぼしている」
「適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態」
⑴ 適切な管理が行われていない結果、既存の景観のルールに著しく適合しない状態となっているケース
① 景観法による景観計画を策定している場合において、当該建築物また は工作物の形態、意匠等の制限に著しく適合しない状態となっている
② 地域で定められた景観保全に係るルールに著しく適合しない状態となっている
⑵ その他、以下のような状態にあり、周囲の景観と著しく不調和な状態であるケース
① 屋根、外壁等が汚物や落書き等で外見上大きく痛んだり、汚れたまま放置されている
② 多数の窓ガラスが割れたまま放置されている
③ 看板が原形をとどめず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されているケース
④ 立木等が建物の全面を覆う程度まで繁茂している
➄ 敷地内にゴミ等が散乱、山積みしたまま放置されている
「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」
⑴ 立木が原因で以下の状態にあるケース
① 立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝などが大量に散らばっている② 木の枝などが近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている
⑵ 空家等に棲みついた動物等が原因で、以下の状態にあるケース
① 動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
② 動物の糞尿その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
③ 敷地外に動物の毛または羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
④ 多数のねずみ、はえ、蚊、のみ等が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
➄ 棲みついた動物が周辺の土地、家屋に浸入し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
⑥ 白アリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
⑶ 建築物等の不適切な管理等が原因で、以下の状態にあるケース
① 門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れているなど不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている
② 屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている
③ 周辺の道路、家屋の敷地等に土砂などが大量に流出している
固定資産税の増加について
特定空家の所有者が勧告に従わない場合には、市町村による「命令」が行われます。
また、勧告を受けることにより住宅用地の特例の対象から外されることになるため、固定資産税については6倍、都市計画税については3倍の負担となります。
【 変 更 前 】 【 変 更 後 】
固定資産税 | |
1,200万円×1/6×1.4%=28,000円 | 1,200万円×1.4%=168,000円 |
都市計画税 | |
1,200万円×1/3×0.3%=12,000円 | 1,200万円×0.3%=36,000円 |
空き家への「行政代執行」について
空き家の所有者が市区町村から命令を受けて
● 履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないとき
のいずれかの場合には、市区町村は本人に代わって必要な措置をする「行政代執行」を行うことができます。また、その際の動産の取り扱いや費用の徴収については、次の通りとなります。
「特定空家の中の動産の取り扱いについて」
行政代執行をする際に対象となる空き家のなかに動産がある場合には、所有者に対して運び出すよう連絡が行われます。しかし、所有者がこれに応じない場合には、行政がこれを期間を定めて保管の上、本人対し引き取りの連絡をします。
「費用の徴収について」
行政代執行がされた場合、その費用は行政が義務者から徴収します。この際には、作業員の賃金、資材費、第三者への補償料といった、実際に代執行に要した費用が対象となります。また、費用の徴収については、国税滞納処分による強制執行が認められ、国税、地方税に次ぐ先取特権が発生します。
「特定空き家に権利が設定されている場合について」
特定空き家に抵当権や賃借権などの第三者の権利が設定されている場合でも、命令や代執行を行うにあたってはその権利者と調整する必要はありません。なお、これらの権利の処分については、特定空き家の所有者と権利者とにおいて解決することとされています。
空き家の処分。現状維持と解体のどちらが得か?
現状維持と解体のコストの比較
特定空き家となり、行政から是正措置がされた場合、建物の固定資産税は6倍、都市計画税は3倍となります。そのためこの措置がされた場合に、そのまま所有した方がよいのか、それとも建物を除却(解体)した方がよいのかお悩みになる方も多いと思います。
そこで、是正措置がされた空き家を5年間所有した場合と、すぐに解体した場合で、それぞれにかかるコストを比較してみると、以下のとおりとなります。
固定資産税 | 都市計画税 | 年間コスト | 5年間コスト | 除却費 | 計 | |
所有維持 | 21万円 | 4,5万円 | 25,5万円 | 127,5,万円 | 0円 | 127,5,万円 |
除却 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 100~150万円 | 100~150万円 |
固定資産税 |
【 現 状 】 1,500万円×1/6×1.4%=35,000円 |
【 勧告後 】 1,500万円×1.4%=210,000円 |
都市計画税 |
【 現 状 】 1,500万円×0.3%=45,000円 |
【 勧告後 】 1,500万円×1/3×0.3%=15,000円 |
以上のように、除却をした場合には100~150万円程度の除却費がはじめにかかりますが、その後の負担はなくなります。
一方、是正勧告された建物を所有し続けた場合は、5年間で102万円の税金を負担しなければならず、負担はその後も続きます。
また、建物の除却については、市区町村により1/2~1/3程度の費用の助成がされることがあるため、これを利用できる場合にはその負担を大幅に減らせます。さらに、建物を除却した場合は、それにより土地の売却代金も上がるため、一緒に売却すれば、除却費用はほぼまかなえることとなります。
以上のことから、通常の空き屋であればそのまま所有し続けるというのもありですが、是正認定をされた場合には所有のコストが大幅に引きあがるため、「保有し続けるほど損」ということになります。
したがって、このようなケースでは、「早期の処分」ということも視野に入れて考えるべきでしょう。
解体にかかる費用の目安は?
空き家の処分(解体)には、一定の費用がかかりますが、これは初期の時点でかかる費用のため、できれば負担を抑えたいところです。
そのためは、はじめに建物の処分費の目安やこれを安くする方法を知ったうえでとりかかることが重要となります。
一般的に、「木造2階建て」の建物の場合の解体処理の目安は首都圏では3~6万円/坪、首都圏以外の地域では2.5~4万円/坪となっています。
そのため、30坪程度の建物の場合には、約100~150万円というのが標準的な処分費となります。
ただし、付属の設備が多い建物や、車での侵入ができない建物の場合には、さらに費用が割高となります。
建物の解体費用の目安(木造二階建30坪:首都圏)
● 廃材の運搬・リサイクル費用 35~40%
● その他費用 10~20%
解体費用を安くするには?
少しでも解体費用を安くするには、次のような方法があります。
⑴ 処分可能なものは先にしておく。
通常、小~中規模の住宅を解体する場合、処分費に占める費用のうち約35~40%前後が廃材の運搬や処分にかかる費用となります。そのため、あらかじめ自分で処分できるものについては処分しておくと、廃材の運搬・処分費を減らすことができます。
⑵ 複数業者からの見積もりを取る
同じ空家の解体であっても、業者ごとに基本料金や、現場までの距離、人件費、設備の違いなどが異なるため、処分の料金も異なります。したがって、解体にあたっては複数の業者からの見積りを取り、最も納得のいくものを選ぶようにすると無駄な出費が抑えられます。
⑶ 閑散期に注文する
解体業者にも一年の中で閑散期と繁忙期があり、一般的には12月から3月以外が閑散期となるところが多いようです。なので、この時期を狙って注文をすれば、費用を安く抑えることができます。
⑷ 行政の助成制度を利用する
多くの市区町村では、空き屋の解体について助成制度を設けているところが多く、その助成率の1/2~1/3というのが一般的です。そのため、これらの制度をうまく活用すれば、大幅に除却にかかる費用を削減することができます。
まとめ
空き家はそのままでも利用することができますが、老朽化したり、管理が不十分だったりする場合には、行政による指導・勧告などの対象となってしまいます。
勧告以上の処分を受けた場合には、固定資産税等の税金が大幅に引き上げられるだけでなく、最悪、罰金や強制取り壊し処分の対象となってしまいます。
そのため、物件を特定空き家にしない普段からの管理や対策が必要となりますが、今後の負担を考えた場合には、「早期に売却する」という選択肢も検討するべきです。
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