企業の運命が決まる!「債務者区分」・「銀行格付け」とは?皆さんは、金融機関が「この企業に対してはあと1,000万円までなら融資する」とか、「この企業に対してはこれ以上の融資をしない」ということをどうやって決めているかをご存知でしょうか?

現在、企業が融資を受けられるかどうかは、ほぼ「債務者区分」や「銀行格付」のランクにより決定されています。

ここでは「債務者区分」や「銀行格付」がどういうものかについて、ご説明します。

 

「債務者区分」と「銀行格付」

「債務者区分」と「銀行格付」の違い

「債務者区分」とは

融資を受けているすべての企業は、金融検査マニュアルに定める基準により、その
財務の内容に応じたランキングが決められています。

これを「債務者区分」といいます。

「銀行格付」について

一方、各金融機関ではこの「債務者区分」にもとづき、それぞれ独自で決めた判定
法により、対象企業の業績等を点数化し、さらに細かくランク付けします。
これを「銀行格付け」といいます。

「定量的分析」と「定正的分析」の違い

「定量的分析」とは、企業の決算書にもとづき財務分析(安全性・成長性・収益性な
ど)を行い、その企業の財務内容に対して配点をしていくことをいいます。

これに対して、「定性的分析」とは、「定量的分析」で算出できない項目(業歴、経
営者の能力、経営
方針、資産、市場動向など)について一定の基準に従い、配点を行
うことをいいます。

しかし、「定量的分析」と「定性的分析」には、配点に大きな差があるため(およそ
7:
3~9:1程度)定性的項目による改善にはどうしても限界があり、ランクアップを
図るためには定量的項目
についての対策が最重要となります。

 

債務者区分と銀行格付けの決定方法

債務者区分と銀行格付けの決定については、一般的には、以下のような流れに従って
行われているようです。

      
【 債務者区分の決定 】 金融検査マニュアルにより決定
 
・普通先
 ・要注意先
 ・要管理先
 ・破綻懸念先
 ・実質破綻先
 ・破綻先

              企業の業績を点数化(スコアリング)

【 銀行格付の決定 】 金融機関の独自の査定により決定
「定量的分析」(一次分析) ← 財務諸表の数値を分析    全体での比率 80~90%

                一時分析の結果を補足する
                              
「定性的分析」(二次分析) ← 業歴、能力、資産等を考慮  全体での比率 20~10%

                

          最終的な格付けの決定

 

「定量的&定性的項目」の中身について

定性分析および定量分析は、それぞれ次のような項目を加味して決定されます。

「定量的項目」
( 成長性 )  ・経常利益増加率    ・自己資本額     ・売上高

( 収益性 )    ・売上高経常利益率   ・総資本経常利益率
( 安全性 )  ・自己資本比率     ・ギアリング比率   ・固定比率   
         ・固定長期適合率    ・流動比率        
( 支払能力 ) ・債務償還年数     ・インタレストカバレッジレシオ  
・キャッシュフロー

「定性的項目」
 ・業 暦  ・経営者、経営方針  ・市場動向  ・資産力  ・業界の評判
 ・後継者の有無 等 

 

なぜ債務者区分を知る必要があるのか?

以上のように、「債務者区分」や「銀行格付」は、今後の企業の生死を左右しかねな
いほど重要なものとなって
います。

そのため、あらかじめ自分の会社の格付けがどの程度かを知っておかないと、いつま
でたっ
ても満足の行く融資を受けられないばかりでなく、逆にある日、突然、回収の
対象となってしまうとも限りません。

しかし、自社の「債務者区分」や「銀行格付」の位置づけを知ることにより

① 銀行の自社に対する対応(融資継続か?融資停止か?)が予測できる。
② 資金調達や経営方針の計画が立てやすくなる。
③ 事前に効果的な対策をすることにより、回収の対象とならずに済む。

というメリットがあります。

詳細な評価については、それなりに専門的な知識が必要となりますが、とりあえず
は以下の
債務者区分判定チャート」を参照いただければ、およその区分をご自
でも知ることができると思います。

 

銀行格付け改善攻略法

改善攻略のカギ

企業がその評価を上げていくためには、まずは効果の出やすい「銀行格付け」を改
善していくことがポイントとなりますが、その際に注目していただきたいのが、

   「 銀行格付けの判定では、各項目の配点は一律ではない 」

という事実です。

前の項でもご説明しましたが、銀行格付けの判定をする際には、経常利益増加率や
自己資本額など多くの項目の数値を分析する必要がありますが、実はこの各項目の
配点は一律ではありません。

つまり、すべての項目について、まんべんなく努力するよりも、これらの重点項目
について集中して対策した方が効率器ということになります。
「銀行格付
」の向上に効果が高いとされるのは、以下の項目です。

銀行格付の改善のための重点項目

・ 自己資本比率  ・ ギアリング比率  ・ 自己資本額  ・ 債務償還年数  
・ キャッシュフロー  ・ I.C.R ( インタレストカバレッジレシオ )

各項目についての算出方法は、次のようになります。

 ① 自己資本比率   
   (資本の部合計 / 負債・資本の部合計) ✖ 100%  大きいほど良い

 
② ギアリング比率
  
(短期、長期借入金 / 資本の部合計) ✖ 100%   小さいほど良い

 ③ 自己資本額     
   大きいほど良いが、これだけでランクをあげるには多額の資本金が必要

 ④ 債務償還年数
   
{ 短期、長期借入金 /(当期減価償却額+営業利益)}  ✖ 100%
   短いほど良い

 
⑤ キャッシュフロー
   
税引後利益 ✚ 当期減価償却額   大きいほど良い

 ⑥ I.C.R(インタレストカバレッジレシオ)
   
{ (営業利益+受取利息、配当金)  / (支払利息、割引料)}
   
大きいほど良い

 ⑦ 経営改善計画    
   通常は中・長期(3~5年程度)の将来の経営目標を表したものを指します。

 

症状別 債務者区分改善の対策法

 < 自己資本過小症候群 >
  自己資本が少ないことにより、金融機関の評価が低くなっているパターンです。

  主に対策すべきは「自己資本比率」、「自己資本額」の改善ですが、すぐに
  「自己資本額」を増やすことは困難なので、
当面は「自己資本比率」の改善を
  重点的に行なうのが効果的です。

  「自己資本比率」の改善は、資本金を増やすことの他に借入額を減らすことで
  も同じ効
果が得られますので、手をつけやすいほうから行なえばよいでしょう。

  また、役員報酬を押さえて利益留保(剰余金)に回すなどの方法も有効です。

  なお、商法→会社法の改正により、代表者が会社に貸し付けていた資金は500万
  円以下
ならば簡単な手続きで資本金に算入することが認められるようになりまし
  たが、
これにより税金が発生する場合がありますので、事前に税理士など専門家
  のアドバイスを受けて行
ってください。
     

 < 利益過少症候群 >

  経常的に会社の利益が少ないことにより、評価が低くなっているパターンです。

  主に対策すべきは、「債務償還年数」と「キャッシュフロー」の改善ですが、利
  益を増やすこ
とにより、他の項目についてもかなりの改善が期待できます。

  利益捻出の方法はいくつかありますが、手っ取り早いのは「役員報酬と経費の削
  
減」、それと「仕入れや原価」の見直しなどです。


 < 債務過大症候群 >

  会社の規模に比較して債務が過大となっているため、評価が低くなってしまって
  いるパ
ターンです。

  主に「債務償還年数」・「ギアリング比率」・「インタレストカバレッジレシオ」
  の改善が効果的
です。

  具体的な対策としては、まず何よりも「債務の額」と「利息の支払い」を減らす
  ことが重
要となります。
  
そしてそのためには、
  
・ 資産を売却して債務の返済に充てる
  
・ 利益がさらに出るような体質にする
  
・ 借換えにより金利の安い金融機関へ乗り換える、
  
・ 低金利の制度融資を積極的に利用する
  
・ 複数の短期の借入を長期の貸付へ一本化する
  
などが効果的となります。


< 経営不安定症候群 >

  中長期の経営のビジョンがないために「経営が安定しない」他、金融機関の信用が
  十分
に得られず評価が上がっていないパターンです。

  
この場合には数値の改善よりも、まずは金融機関に向けた中長期の経営計画を作る
  ことで評価が大きく改善する可能性があります。を強くお勧めします。

  また、「経営革新計画」や公的な認定などを取得することにより、金融機関の信用
  が増すだけでなく、
経営にもプラスとなりますので財務体質の改善にも役立ちます。

 

金融検査マニュアルの事例で見る経営改善のケース 

金融検査マニュアルでは、中小企業を対象とした経営改善の事例を数多く公表しています。
ここではその中から、すぐに皆さんの経営に役立ちそうな事例のいくつかをご紹介します。

事例  家族で経営している家電業者のケース


【 事業概況 】
・ 家電販売業であるA社は、これまで家族経営により、主に近隣地区の顧客を対象に商
  
売を行ってきた。しかし、大型量販店の進出により、売上は徐々に減少し、前期では
  ピーク時の 2/3
の水準となっている。

・ 最近は2 期連続の赤字を計上し、赤字分については個人の預金から補填しているも
  の今期に入ってから2度ほど返済が遅れている。
また、2年前に保証協会に対し、元
  金の一部減額を申請し(リスケジュール中)これ
を了承されている。
   
・ 前期年商は8,000万円、借入れ総額は約6,000万円。
  
経営者のB氏(65才)には息子(30才)があるが現在、サラリーマンとなっている。

【現在の状況】
A社は、現在、2 期連続の赤字を計上しており、具体的な業績向上の材料も見当たらない
ことから要注意先の下位区分である「管理先」に区分されている。しかし、このままの状況
で、さらに今期も赤字を計上するようならば、もう一ランク下の
「破綻懸念先」へのランク
ダウンの可能性も金融機関から指摘されている。

【対策上の問題点】
現在の問題点としては、以下のものがランクを低下させる原因となってている。
 2 期連続の赤字を計上している。
 リスケジュールを行っている。
 売上げの回復が見込めない。

【 対策のポイント 】
本事例では、「過去にリスケジュールを行っている」こと、「2 期連続の赤字を出している」
ことの2点が区分を引き下げている最大の要因となっている。

A社は、現在はまだ「管理先」でとどまっているが、今後「破綻懸念先」に区分された場合に
は金融機関による回収対応なども考えられることから、これ以上のランクダウンはな
んとして
でも避けなければならない状況である。

ここでは、この会社が現状維持および近い将来的なランクアップをするために最低限必要な対
策の一例を挙げてみる。

① 経営改善計画の作成

現在、A社はリスケジュールや支払いの遅れなどにより、金融機関の信用を失っている状況に
あり、
信用を回復するためには経営改善計画を作成し、金融機関の支援を仰ぐことが最も効果
的な手段となる。

しかし、この計画はただ作ればよいというわけではなく、3ケ月または6ケ月ごとにその進捗
の報告を求められることから、最低限でも80%程度は達成できるものでなければなら
ない。
もし、これが提出できない、または内容について金融機関の了承が得られない場合には、格付
けの低下はほぼ免れない。

逆に、計画を作成し、金融機関の協力を得て80%以上の進捗に成功すれば、区分の改善に大き
な効果をもたらすこととなる。

 ※ 金融検査マニュアルにおいても、実効的な経営改善計画書を提出し、計画の80%程度を
   達成できている企業については、格付けダウンをしないように指導している。

② 役員借入金の資本金への充当等

これまでA社では、赤字の補填のために代表者Bが個人資産をつぎこんでおり、これは決算書上
で「役員借入金」として計上されている。

       
金融検査マニュアルでは、このような資金については、会社の資本金と同質のものとみなし、代
表者が返還を要求しないことを条件に、表面上の資本金(登記簿上の資本金)に加
算して格付け
算定することができるものとされている。

仮にこのような処理が行われるとすれば、決算書上では資本金が増加し、負債が減少するため格
付け対策上の効果は大きい。
しかし、企業によってはこれを仮払金や他の科目で計上している場
合も多く、このような
場合には加算の対象からもれてしまうことが十分に考えられる。

なお、確実に上記のような処理を望むのならば「代表者から会社への貸付金」を「資本金」へと
振り替える手続きが必要となるが、
この手続きは、内容的には「貸付金の現物出資」となり、近
時の法改正により500万円
以下のものについては簡易な手続きで行えるようになっている。

③ 後継者の事業継続の表明

直接の格付け評価には影響が少ないものの、事業が後継者により継続するのかどうかは金融機関
にとっては重要な関心事である。また、
金融検査マニュアルにおいても、後継者による事業への
支援が表明されている場合には、
債務者区分の判定上これを考慮すべきこととされている。

本事例においては、息子はサラリーマンとなっているが、この息子によるA社への支援が明確に
なるならば、債務者区分対策上は有利になるものと考えられる。

 

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