日本政策金融公庫の審査落ちの理由と基準について

創業融資の審査基準日本政策金融公庫

皆さんは
「日本政策金融公庫はどういう基準で、融資をしているのだろう?」
と考えたことはないでしょうか?

審査で落ちた場合でも、その内容は説明されないので、その基準がどうなっているのかは、なおさらわかりにくくなっています。

そもそも審査基準というのは、それぞれの金融機関で決められています。
なので、これが正式に公表されることはありませんが、過去の経験や担当者からのヒアリングによりある程度これを推測することは可能です。

そこで、ここでは聞き取りなどで分かった、日本政策金融公庫の審査基準についてご説明します。

融資の種類による審査基準の違い

日本政策金融公庫では、中小企業向けの融資を「創業者向け」と「一般企業向け」に分けて対応・審査しています。 ※農林水産等の特別な事業を除く

この2つの融資における一番大きな審査基準の違いは

◆ 創業者向け融資  ⇒ 事業計画書にもとづいて審査
◆ 一般企業向け融資 ⇒ 決算書や返済実績に基づいて審査

ということにあります。

そのため、それぞれで審査の基準も、かなり異なります。

たとえば、創業者向け融資では、「自己資金の要件」や「雇用の要件」といった創業融資に特有の条件をクリアーできていないというのが最も多い理由です。

これに対して、一般企業向け融資では、「決算の内容が悪い」、「納税ができていない」などの理由が、上位を占めます。
参照新創業融資制度の使い方完全解説!自己資金がなくても0K?制度融資との関係は?

以下、それぞれについて具体的に解説いたします。

「創業融資」の場合の審査落ちの理由

創業の要件を満たしていない

日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用するためには、
「創業者に該当する」
必要があります。

そしてこの場合の「創業者」とは、次のいずれかの方が該当します。

創業者の条件

 上記のいずれかであって、これまでに事業経験をしたことがない方
➀ これから開業する方
➁ 開業後2期を経過していない

この中で、一番目と二番目の要件については問題なくても、最後の要件が満たせていないという方が少なくありません。

例えば、次のような方は「創業者」に当たらない可能性があります。

 以前に会社の代表者となっていたことがある。
〇 個人事業をしていた経験がある。
〇 以前に会社経営をした後、サラリーマンになったが、再び、個人で起業した。

仮に上のいずれかに該当する場合であっても、金融機関ではいちいちそんなことはいわないので、融資を申し込んだ側では気が付かないのが普通です。

しかし、このように実は「創業者としての要件を満たしていない」という事例はよくありますのでご注意ください。


「十分な自己資金」が用意できていない

公庫の新創業融資制度を利用する場合には、
「創業にかかる事業経費の10分の1以上の自己資金を所有していること」
が条件となっています。

これは例えば、
創業するために必要な経費の全部(設備資金・運転資金)が1,000万円である場合、少なくとも100万円以上は自分で預金等を用意できていなければならない
ということを意味します。
※ つまりこの場合は、最大900万円まで融資が受けられるということになります。

そのため、先の例で100万円しかない方が1,500万円の融資を受けようとしても、それは無理ということになります。このようにこの要件を無視した申し込みはお断りということになってしまいます。
参照80%以上の人が知らない!新創業融資制度の「自己資金」の疑問をすべて解説!


自己資金と融資額のバランスがとれていない

新創業融資制度の自己資金を考えるうえで、もうひとつ重要なのが
「自己資金額と融資申込額とのバランス」
です。

創業融資では、通常、出やすい金額というのは「自己資金額の3~4倍」とされています。

しかし、中には自分の実力や自己資金の額を考えず、「融資の上限は3,000万円なので、1,000万円くらいは簡単に出るだろう」と根拠のない申込みをされる方がいます。

しかし、このような方の申込みは、金額ありきで申込額を決めているので、売り上げの根拠もなければ、自己資金とのバランスもとれていないものがほとんどです。

このような計画は内容に説得力がなく、金融機関からみて実現性が低いと判断されるため、審査に通るのは難しくなります。


公共料金、家賃、税金などが継続して支払われていない

創業融資・一般融資を問わず、厳しくチェックされるのが
公共料金や税金などの支払い遅れや未納
です。

主に融資で対象となるものとしては、以下のものがあります。

チェックされる公共料金や税金

〇 家賃の支払い
〇 自宅の場合には固定資産税の支払い
〇 公共料金の支払い
〇 各種ローンの支払い

日本政策金融公庫の新創業融資では納税はチェックされませんが、制度融資(信用保証協会付融資)では住民税の納税証明書を求められるのが一般的です。

なお、これらについて
「申し込み以前の1年間に延滞や未納の事実がある場合」
には、融資はお断りとなりますので、ご注意ください。
 参照日本政策金融公庫に融資が断られた原因はこれだ!


事業計画書の内容が適切でない

創業融資では、必ず事業計画書の提出が求められますが、その内容の出来・不出来は審査に大きく影響します。特に申込書の中に書かれている項目について、「何も書いていない」、「書かれてはいるが内容が不十分」という場合は減点の対象となります。

なお、以前に「創業融資の審査で最も重視するところはどこか?」と公庫の担当者に確認したところ、次の3点という回答がありました。

〇 本人の事業経験の有無
〇 事業に対する熱意

〇 収支計画の中身の妥当性

「事業経験」については、〇年以上必要という明確な要件はありませんが、一般的には3年以上あるのが望ましいとされています。ただし、み時五機関でもFCなどのキチンとした研修は、事業経験として認められやすいです。

「事業への熱意」については、どれだけ事業への本気度があるかを見られます。
この部分は事業計画書の内容だけでなく、面談での話し方や伝え方も対象となるので、その点での工夫も必要です。

最後に、「収支計画の中身の妥当性」については、後述するようにその根拠がどれだけ明確となっているかということが重要な判断材料とされます。

なお、具体的な事業計画書の作成の仕方やポイントについては、「最新の実例見本で解説! 飲食店創業融資のための事業計画書(創業計画書)の作成」の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

売上げ・利益の根拠が明確・妥当であること

先程、創業計画では「計画の根拠が明確になっていることが大事」といいましたが、その中でも特に重要なのが、「売り上げ」と「利益」です。

売上げがなければ利益を出すことはできませんし、利益がなければ返済が不可能となります。

しかし、その売上げが、単なる自分の希望や予想でしかない場合には、計画としては✕です。

たとえば、飲食店では売上げの見込みは 「1人当たりの販売単価 ✖ 席数 ✖ 回転率」で算定します。

しかし、この一つ一つの項目について明確な根拠がなければ、説得力のない計画として審査落ちしてしまう可能性が大となります

販売単価
● なぜ、その単価なのか?
● 同業他社とのバランスは?
● メニューの構成とあっているか?席数
実際のレイアウトと同じになっているか?
● 使わない席を計算に入れていないか?(4人席を2人で使うケースなど)回転率
● 自分の理想だけで決めていないか?
● 時間帯による変動などを考慮しているか?


信用情報に問題がある

融資やローンの借り入れで返済していない期間や未納があると、それは信用情報登録機関にネガティブな情報(事故情報)として登録されます。

この事故情報は、各信用情報登録機関で共有されているため、当然、日本政策金融公庫やその他の金融機関でもこれを確認することができることとなっています。

情報の登録される期間がどのくらいか?は、事故の内容で異なります。

一般的に、事故情報がある場合には、融資はお断りとなってしまいます。

なので、融資の申込み前には、自分の個人情報がどうなっているかを確認しておいた方がよいでしょう。

 

その他融資の一般的な条件が守られていること

創業融資に限らず一般の融資でも、次のような事由がある場合には、融資はされません。

その他の融資NGの理由

● 過大な債務やローンがある。
● 融資ができない種類の事業である。(風俗、金融業等)
● 計画で赤字が見込まれる事業内容である。
● 売り上げが見込めない事業ある。  など

 

一般融資の審査基準

一般の融資では、次のような項目が審査基準となるため、これらに抵触する場合には融資審査で落とされる原因となります。

決算書の内容が「過大な赤字」や「債務超過」である

日本政策金融公庫に限らず、通常の金融機関では貸出先企業に対する審査は、主にその企業の実績、つまりは決算書を見て行っています。

仮に、多少の赤字があっても、返済の見込みがあると判断できる場合には、融資は行われます。

しかし、「連続した赤字であり、累積の赤字幅が大きい」や「債務超過状態である」といった場合には融資を受けることは難しくなります。


借入れの総額が一定の範囲を超えている

企業の融資額が一定の限度を超える場合には、追加での融資は難しくなります。

どの程度まで借り入れができるかについては、その企業の実力や実績によりますが、一般的には次の数字が目安とされています。この目安のことを「借入金月商倍率」といいます。

【小売業】  1.5:正常  3.0:注意  6.0:危険
【卸売業】  0.8:正常  1.5:注意  3.0:危険

借入れの水準が正常~注意までの間で収まっている場合には、追加の融資を受けられる可能性がありますが、それを超える場合には審査も厳しくなります。


前回の融資から1年以上の期間が経過していない

最後に借入れをした時から1年以上の期間が経過していない場合には、融資は難しい傾向にあります。
この理由は、最低1年以上は経過しないと借入金の返済が進まないためです。

なお、借り入れの際に元金の返済を先延ばしにする「据置制度」を利用するケースがありますが、この場合にはその間は利息しか支払っていないため返済実績があるとは見られません。

したがって、前回から1年以内の借り入れの場合は、かなり経営成績が良くないと、借り入れは困難となります。


その他

● 事業計画書の内容が適切であること
● 
公共料金、家賃、税金などが定期に支払われていること
● 返済原資が確保できていること

以上については創業融資の場合と同じです。

 

まとめ

融資の審査ではその基準が明確でないため、審査に落ちた理由を正確に推測するのは困難です。

しかし、多くのケースでは、ここで上げた理由のいずれかに該当していることがほとんどなので、これらを参考に自分の場合はどこに原因があったのかを、また、これから融資を受ける方予定の方はどれかに該当しないかを確認してください。

なお、119番資金調達NETでは、事業プランや事業計画を作成する際のヒアリングで、これらの問題の発見と対応を行っています。もし、融資の申込み前に気になることがあれば、まずはご相談ください。


プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの引地です。

創業者・中小企業経営者の方向けに、
● 融資の申込みの計画・申請、
● 事業計画書の作成、金融機関との交渉
● 契約・許認可手続き、経営の再建
などの「中小企業のお金と経営」をサポートしています。

特に、融資関係については、すぐに問題解決の提案をする「即効提案」がお客様から好評をいただいています。

【経歴】
2005年に金融・経営を専門とするIchigo(一期)行政書士事務所を開設。
2008に業界初の融資ノウハウをまとめた「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。異例の6刷増刷を達成。※現在も継続中。

コンサルティングでは、2020現在、累計相談者数2,000人を突破。6億2,000万円の資金調達額を達成中。
2008年に創業者支援団体ドリームゲートにて「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞

【資 格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

【出版実績】
2008.12 「確実に公的創業融資を引き出す本」(TAC出版)を出版
     アマゾンレビュー評価4.2
2011.08 「銀行格付けアップ術」
2014.07 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」

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