多くの企業では、もし、銀行から「代位弁済をする」という連絡が来たときには、そのまま受け入れるしかないとお考えだと思います。
しかし、それが正式な代位弁済の請求の前のものならば、これを回避できる可能性があります。
この記事では119番資金調達NETがサポートし、代位弁済請求を回避した事例にもとづいて、「どのようなタイミング」で、「何をすればよいか?」について解説いたします。
目次
代位弁済とは?
ここでは、まず代位弁済を行う信用保証協会の役割や、代位弁済の性質、流れについて解説いたします。
信用保証協会と金融機関の役割
信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受けやすくするために、債務を保証する公的機関です。
信用保証協会の保証付き融資は、「借主:中小企業」、「貸主:金融機関」、「保証人:信用保証協会」という三者の関係で成立しており、それぞれが次のような役割を果たしています。
| 機 関 | 役 割 |
| 中小企業 | 融資の借入れ |
| 金融機関 | 融資の貸付・代位弁済請求(代位弁済前の債権者) |
| 信用保証協会 | 求償権の行使(代位弁済後の債権者) |
このように代位弁済を考えるうえで重要なのは、保証協会は「お金を貸している主体」ではなく、代位弁済をするかどうかを決定するのは金融機関であるという点です。
そのため、代位弁済前の交渉は、金融機関に対して行うということに注意が必要です。
代位弁済とは何か
「代位弁済」とは、借主が返済不能となった場合に、
保証協会が借主に代わって金融機関へ残債を支払う行為
をいいます。
代位弁済が行われた場合、
▼ 金融機関
➡ 保証協会から一括返済を受ける(代位弁済)
▼ 保証協会
➡ 借主(および保証人)に対して求償権を持つ
という関係となります。
このように信用保証協会が金融機関に対して(債務者に代わって)弁済をした場合には、以降は信用保証協会が債権者となって債務者に返済を求めることができるようになります。
このような信用保証協会の権利を「求償権」といいます。
つまり、代位弁済とは、信用保証協会が求償権にもとづいて債務者に対して返済を求める行為を意味します。
なお、求償権はこれを消滅できる場合があります。
詳しくは「代位弁済をリセットする。「求償権の消滅保証制度」とは?」の記事をご参考ください。
代位弁済の「特徴」
債務が消えるわけではない
代位弁済がされた場合の誤解の一つとして、「代位弁済=借金が帳消しになる」という認識があります。
しかし、前述したように債務は金融機関→信用保証協会に移転しただけであり、これにより債務が消滅することはありません。
保証人の責任は継続する
信用保証協会付債務について、経営者が連帯保証人となっている場合は、原則、代位弁済後も法人と経営者個人の双方が連帯して返済義務を負います。
したがって、もし、法人が返済できないときは、経営者本人が同様の責任を負うこととなります。
また、通常、保証人には
「催告の抗弁権」
➡ 先に主たる債務者に請求するよう主張できる権利
「検索の抗弁権」
➡ 主たる債務者の財産を先に調べるよう求める権利
がありますが、連帯保証人にはこれらの権利がないため、主たる債務者とほぼ同様の責任を負います。
代位弁済により負債額は増える
代位弁済がされると、信用保証協会より債務者に対して残債全額の一括請求が行われます。
この時に全額の支払いができればよいのですが、たいていの場合はそれは難しいといえるでしょう。
もし、全額の支払いができない場合には、利息に代えて遅延損害金が発生します。
通常の金融機関の利息が2~4%であるのに対して、遅延損害金の利率は14.6%と非常に高率なため、それを上回る返済ができないと、債務はさらに膨らむこととなります。
例 )
残高が 1,000万円の場合の遅延損害金
年間- 146万円 1ヶ月あたり-約12万円
代位弁済までの「期間」と手続きの流れ
代位弁済の請求がされるまでの一般的な流れは、以下のとおりです。
1. 返済延滞(1~3か月)
▼
2. 金融機関からの督促
▼
3. 期限の利益喪失
▼
4. 保証協会への事故報告
▼
5. 代位弁済(延滞開始から概ね3~6か月)
※上記は、金融機関により前後します。
一般的に、「金融機関からの督促」から「期限の利益を失う」までには、数週間程度の時間しかかかりません。
そのため、いかにしてこの段階で金融機関の理解や協力を取り付けるかが、非常に重要となります。
代位弁済回避の経緯と戦略
以下では、代位弁済を回避するに至った背景と戦略、交渉の流れなどについて解説いたします。
代位弁済請求までの経緯
【主な経緯】
A社から初めてご連絡をいただいたのは、119番資金調達NETでご案内している無料相談がきっかげした。
メールだけでは不明な点があったため、電話で再度ご相談をいただきましたが、その時の話をまとめると次のような内容でした。
▼ A社は広告代理店を行っている10期目の企業であり、財務状況は前期・今期とやや厳しい状況にあるが、これまで、融資返済は滞ったことはない。
▼ しかし、経理の手違いにより、取引先への支払いが遅れたことがあり、また、先月にはB社との支払いに関する交渉をしていたところ、同社より支払い督促手続きがされた。
▼ 支払い督促手続きの通知を受けた社員は、この時点でその重要性を理解できておらず、通常の請求通知と勘違いしたため、この事実を社長に告げなかった。
▼ 支払い督促手続き後、法定の期間内にA社より意義の申し立てをしなかったことから、支払い督促請求が債務名義として確定したため、B社はこれにもとづきA社のメイン的役割の〇〇信金の口座に差押えをかけた。
▼ 〇〇信金では短期間での2回の事故および口座差押えの事実を重く見て、A社に対して、信用保証協会への報告と代位弁済をする意向である旨を通知した。
【事故の原因と背景】
今回の事故の原因およびそれに至る背景としては、以下のようなものがあった。
▼ 支払い督促請求を放置した原因としては、以下の2つのことが挙げられる。
① A社はB社のサービスを約3ヶ月間まったく利用しなかったことから、この分を今後の3ヶ月分に充当してほしい旨の交渉をしていたが、途中よりB社から連絡がなくなったため、担当者が協議が継続していると認識していたこと。
▼ 督促通知を受け取った担当者が、その書類を受領した後、業務が忙しいことを理由に社長への報告を怠っていたこと。
金融機関からの請求とこれに対する対策
A社からの要請を受けて、さらに詳細な事情を確認したところ
● まずは、今回の事故についての経緯報告と対策を〇〇信金から求められていること。
● 信用保証協会への報告は止められないものの、A社の対応いかんでは、代位弁済請求を見送る可能性がわずかにあること。
● 別の取引先金融機関である✕✕信金から、今回の事情を理解したうえで、自行への借換えを検討できる旨の打診があったが、それも代位弁済請求がされた場合は難しくなること。
などがわかりました。
このような状況の下、119番資金調達NETでは、以下の優先順位と方針を立てました。
▼ 優先順位は〇〇信金による代位弁済請求を何とか阻止すること
▼ もし、これができなかった場合は、信用保証協会へ経緯の説明や今後の経営等の計画書を提出し、一括弁済から分割弁済としてもらうよう要請すること
▼ 可能であれば、✕✕信金に対して、代位弁済前に借換え処理の実行を要請すること
金融機関との交渉準備
今回の代位弁済請求を回避するための最大のポイントは、なんといっても「事故の報告書と今後の対策案」にあることは明らかです。
そこで、119番資金調達NETでは、これらの事情を踏まえたうえで、以下の対応をA社社長にお願いしました。
▼ 事故の経緯については、事実が生じた順に時系列でわかりやすくまとめ、また、その際には、絶対虚偽の内容を書かないこと
▼ 事故の責任はあくまでも社長本人にあることを明言すること
▼ 今後の資金繰り表をあわせて提出することで、今回の事故はキャッシュフローに起因するものではなく、あくまでも社内体制の不備や担当者への教育不足に原因があることを報告の骨子とすること
▼ 今後、このような支払いミスがないよう期日管理システムを導入すること
▼ 請求があるたびに、経理担当者と社長とのダブルチェックを必ず行うこと
▼ 専門家による定期的な社員研修を実施すること
代位弁済請求回避の結末
以上の方針のもと、A社社長の協力の下、以下の資料を作成し、〇〇信金へ提出しました。
① 事故報告書
② 今後の方針案
③ 決算書3期分と試算表
④ 資金繰り予定表
⑤ 取引先金融機関および借り入れ状況一覧表
これらの資料を提出したときの〇〇信金の対応は、
「まずは、一度、この資料をもとに、信用保証協会への事故報告を行い、そのうえで行内で今後の方向性を検討する。」
というものでした。
このように、この時点での〇〇信金の対応はあまり前向きのものではなかったため、A社とは代位弁済がされた後の対応についても協議を始めました。
しかし、それから3日がたったころ、〇〇信金の担当者より、
「信用保証協会への事故報告は行ったが、今回の報告書を検討した結果、御社に関する代位弁済請求は見送ることとしました。」
との連絡がありました。
つまりこれは、提出した報告書や改善案の内容を〇〇信金が認めてくれたということに他なりません。
通常、事故やトラブルなどにより金融機関の信用を一度でも失うと、それを取り戻すのは非常に難しくなります。
しかし、そのような場合でも、今回のケースのように、早い段階で、真摯にかつ適切に対応すれば、代位弁済を回避できる可能性があります。
そのためには、まずは、あきらめずにすぐに専門家にご相談することが重要となります。
まとめ
代位弁済は、中小企業にとって死活問題となります。
また、もし、手続きが始まってしまうとそれを覆すことはできないため、その後の交渉は分割払いのお願いや、担保権の実行の猶予といった後ろ向きなものにならざるを得ません。
しかし、代位弁済の請求がされる前であれば、今回のケースのように回避できる可能性があるため、金融機関から打診があった場合にはすぐに対応することがその明暗を分けます。
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