金融機関から融資を受ける際には「決算書」や「試算表」の提出を求められるのが普通です。
これは金融機関が融資の判断材料として必要だから求めてくるのですが、彼らがこれを使ってどんなところを見ているのか?や、どんな分析をしているのか?ということはご存知でしょうか?
もし、それがわかれば、こちら側でも事前に対策ができるので、かなり有利になりのはお分かりいただけると思います。
とはいえ、決算書や財務指標というと、「何が書いてあるのかよくわからない」という方が少なくないのではないでしょうか?
確かに、あまり決算書になじみのない方であればそうお感じになるかもしれませんが、実は金融機関が融資の判断で重視している数字や項目というのは、さほど多くありません。
そこでここでは、決算書が読めなくともできる「融資対策の6つのポイント」についてご説明します。
融資審査のための改善ポイント
資本の部は「債務超過」になっていないか?
「債務超過」とは、現在ある資産よりも負債の方が多い状態をいいます。
この場合、決算書上では、資産の部の総額よりも負債の部の総額が上回っており、資本の部の合計金額のところに△(マイナス)が表示されます。
金融機関はこのような状況を非常に嫌います。そのため、次のような対策をしてこれを解消しなければ、その後の融資を受けることは難しくなってしまいますので、できるだけ早期に対策することをおすすめします。
【対 策】
◆ 手っ取り早い方法としては、社長が会社に貸付けているお金を資本金に充当する。
◆ 増資をする。
毎月の返済利益はでているか?
通常、融資を受けた場合、その返済できる額の限度は
「 減価償却額 + 税引き後利益 」
となります。
この額を超えての返済は不可能なため、この合計額で融資の返済ができなければ新規の融資は難しくなります。
なお、金融機関ではこの税引き後利益と同様に「営業利益」を重視する傾向にあります。
なぜなら、税引き後利益は本業以外の要素(たとえば、特別償却など)によっても大きく変動するからです。
しかし、「営業利益」は、会社本来の稼ぐ力ですので、他の要素によって変動することはありません。
そのため、仮に「税引き後利益」が赤字でも「営業利益」で黒字を確保できる場合には、まだ資金調達できる可能性があります。
【対 策】
◆ 役員報酬を減らして利益を出す。
◆ 税引き後利益は赤字でも、営業利益では黒字を確保できているときは、その点を金融機関に強くピールする。
適正な減価償却を行なっているか?
税法上では、固定資産の減価償却は任意とされていますが、金融機関では固定資産の償却が正しく行われているかどうかを厳しくチェックしています。そしてもし、これに不足がある場合には融資審査での評価も大きく下がることになります。
したがって、減価償却資産については、すべてを正しく計上する必要があります。
なお、「今期は苦しいから」といって、期によって減価償却をしたり、しなかったりというのは融資対策上は禁物です。また、法律の耐用年数に準じた償却年数になっているかについても注意してください。
ちなみに、決算書の上では、法律で定められた減価償却をしていない場合には、その不足分が「償却不足額〇〇円」として記載され、十分な減価償却をしていないことがすぐにわかってしまうため、ご注意ください。
【対 策】
但し、償却方法を期の途中で「定額法」から「定率法」へと変更するのは不可。
◆ 償却不足分がある場合には、適正額となるまで償却を行い、不足をなくす。
既存の借り入れ金とのバランスは適正か?
借りた金額をどのくらいの期間で返済できるかについては、金融機関が最も気にすることの一つです。
融資の返済をどの程度でできるのかについてはは以下の木で求めることができます。
長期借入金の合計額(既存+新規分) / 償却前利益(減価償却額+税引き後利益)
これは、既存+これからの融資額を現時点での返済力で見た場合に、あと何年で返済ができるかを表すものですが、この値があまりにも大きく(長期)となってしまう場合には、新規の融資は難しいということになります。
ちなみに、一般的な企業でのこの期間の上限は10年とされています。
なお、たとえ借入金額が変わらない場合でも、償却前利益が少なくなっていく場合にはその分返済期間は長くなります。
価値のないものが資産として計上していないか?
貸借対照表の「資産の部」に計上されている資産にはいくつも種類がありますが、そのすべてが額面どおりの価値があるものとは限りません。
実際には価値がない資産の例
〇 名目だけで中身のない繰延資産
〇 事実上、回収ができなくなっている売掛金
〇 簿価より実際の額が安くなっている有価証券
本来、これらについては、その実情に合わせた会計処理(時価での見直しなど)が必要となるのですが、企業によってはこれをそのまま計上している場合も少なくありません。
しかし、金融機関では、このような資産については、適正な相場にもとづいて本来の正しい資産価値に引きなおした上で評価をします。
そのため、その内容が実態とかけ離れている場合には、経営者本人も気がつかない間に債務超過の会社となってしまっていることがあります。このようなケースでは、当然に融資審査上でも、減点の対象となります。
私のお客さんで、自分の会社の未払い金などを奥さんが経営する第二会社にすべて付け回し、自分の会社は優良だとして金融機関から融資をうけようとした方がいましたが、この場合には第二会社も一体のものとして見られますので、すべての金融機関から融資を断られたという方がいました。
このように金融機関では、その会社単独での経営状態だけを見ているのではなく、第二会社がある場合にはその会社の内容を含めてどうかということを見ますので、単なる負債の付け回しや、融通取引などは意味がないということになります。
税金や公共料金、家賃等の未払いはないか?
融資の申し込みで特に気をつけなければならないのが、「税金類の未払い」です。
特に制度融資や政府系金融機関を利用した融資の場合には、これらのうち1つでも未払いや延滞があると門前払いとなってしまう可能性があります。
したがって、家賃や税金等については早い時期から、未納や滞納がないよい履歴を作っておく必要があります。
融資では、次のようなものの支払い状況が審査の対象となります。
◆ 公共料金
◆ 代表者個人の住宅ローン
◆ 住民税(法人住民税を含む)
◆ 源泉所得税
◆ 法人税
◆ 消費税 他
融資の審査では納税証明書の提出をもとめられますが、ここに記載されているもの以外のもの(源泉所得など)についても決算書や通帳の内容を見て未納等があるか内科を判断されます。
なお、税金については、分割払いが可能な場合や、納税の予定が確認できる場合には、例外的に融資がされることもありますので、このような場合には金融機関へ相談してみてください。
まとめ
このように金融機関が重視しているポイントというのは、さほど多くないということがお分かりいただけるかと思います。
もちろん、実際にはこれだけを見ているわけではないのですが、まずはこの基本的な6つの項目の中に大きな問題があるようであれば、希望通りの融資は難してということになります。
しかし、「実際の決算書を見るとどうもよくわからない」、「ウチの場合はどんな対策をすればよいのだろうか?」とお悩みになる方も少なくないと思います。
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