経営者保証が外れない会社の共通点と外すためのポイント

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経営者の方の中には「いろいろ、努力しているのに経営者保証が外れない」、「金融機関が話を聞いてくれない」とお悩みの方もいると思います。

しかし、対策をしているのに経営者保証の解除ができないのは、それが間違った方向で努力しているせいかもしれません。

どんなに努力をしてもそれが間違った方向や、金融機関の考えに沿わないものである場合は、保証を外すのは難しくなります。

この記事では、経営者保証が外れない会社の共通点やしてはいけない交渉、気付かずにしている間違った資料の作り方について解説いたします。

金融機関が保証解除を拒否する典型パターン

金融機関が保証の解除の拒否をするには、何らかの原因・理由がありますが、会社がこれを理解することでさらに前向きな対応をとることが可能となります。

解除の拒否とガイドラインの関係

金融機関が保証解除をするには、その会社が金融庁の「経営者保証ガイドライン」に準拠した内容となっていなければなりません。

ガイドラインでは、主に次の3点ができていることが求められています。
法人と個人の分離
財務基盤の強化
透明性の高い情報開示

そのため、これらのいずれかができていない、もしくは不十分な場合には、金融機関は保証解除に応じません。

金融機関が解除の拒否をする原因にはいくつかのパターンがあるため、まずは自分の会社がこれらのいずれかに当てはまっていないかを確認する必要があります。

なお、保証解除のため、具体的にどのようなアプローチをすべきかについては「経営者保証解除とは? 解除のためには、どんなアプローチをすればよい?」をご参考ください。

1. 会社と経営者個人の区分が曖昧

経営者保証ができない会社の中で、最も多いのが、会社と経営者個人の区分が曖昧なケースです。この代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

社長個人の預金口座と会社の資金が混在している

株主が社長一人の会社であっても、法人と経営者はまったくの別人格としてなります。

にもかかわらず、これが一緒であり、分離ができていない場合には、資産の私的流用が疑われるだけでなく、税務上のペナルティを受ける可能性もあります。

会社と個人資産の分離ができていない例としては、以下のようなものがあります。

▼  社長の自宅を店舗兼住宅等として利用している場合
  は、法人が社長に利用の割合に応じた賃料を支払う

▼  法人と社長間の資金の預け入れ、引き出しをごっち
  ゃにせず、明確な基準にもとづき行う

▼  個人が消費した費用や商品を法人の経費としない
▼  事業活動に不可欠な資産(事務所・設備・工場・営
  業車等)は、法人所有にする

▼  「中小企業の会計に関する基本要領」にもとづいた
  処理をする。

  ※「中小企業の会計に関する基本要領」

 

会社から社長への貸付金(役員貸付金)がある

会社から社長個人への貸付けは、会社の事業資金の流用を意味します。

そのため、貸付けをする場合には、契約書を作成し、適正な利息を支払う必要があります。

また、できるだけその期のうちに清算するか、それが難しい場合には、継続的に残高を減らしていきます。なお、これらは税務調査においても、チェックされます。

仮払金が未清算のまま計上されている

仮払金は、いわば一時的なお金の立替えであるため、本来、速やかに処理すべきものです

にもかかわらず、未精算のまま期を繰り越している場合には、「社長の私的な利用ではないか?」が強く疑われます。

車などの社有資産の社長個人による使用

法人名義の自動車については、車両の購入費のほか、ガソリン代、保険料、各種税金などが経費として認められます。

しかし、これはあくまでも通勤や営業などの会社の事業目的に沿ったものに限られ、社長やその家族の私的な利用は認められません。

そのため、金融機関からモラルがないと判断されるだけでなく、税務調査でもこれらの出費が否認される可能性があります。

役員報酬が根拠なく設定・改定されている

役員報酬は、原則、期首から3か月以内に定めた金額を1年間“定期同額”で支給することが損金算入の要件となっています。

そのため、今月は家計が苦しいから増やそうなどの個人的な理由で恣意的に増減することはできません。

減価償却が適正に行われていない

減価償却費は、減価償却の対象: 固定資産の取得に要した支出を、使用可能期間に応じて分割し、毎年の経費として計上するものです。
また、その基準となる期間は財務省の法定耐用年数表にもとづき行います。

にもかかわらず、これをしたりしなかったり、または不適切な期間で行うことは、利益の操作とみなされ評価を下げることとなります。

2. 財務内容が見えにくい会社

次に問題になりやすいのが、財務内容が見えにくい会社です。

決算書の数字自体は悪くなくても、毎期の変動が激しかったり、説明のつかない費用が多かったりすると、銀行は慎重になります。

とくに、節税を優先しすぎた決算は、「実態が分からない」という理由でマイナス評価につながることがあります。

3. 将来の見通しを語れない会社

三つ目は、将来の見通しを語れない会社です。

金融機関は過去の数字だけでなく、「この会社が今後どう成長し、どう返済していくのか」を重視します。

それにもかかわらず、「とりあえず今は問題ない」「これまで何とかなってきた」といった説明に終始すると、保証解除の検討テーブルにすら乗りません。


これらのパターンに共通しているのは、会社の問題というより、銀行が説明責任を果たせない状態にあるという点です。

保証を外した理由を問われたとき、「なぜこの会社は例外なのか」を合理的に説明できなければ、銀行は解除に踏み切れません。

逆に言えば、これらの問題点を一つずつ潰していければ、保証解除への道は確実に近づきます。

金融機関の査定の仕方

なお、金融機関が企業の財務内容の査定をする際には、BSとPLの内容を参考にします。

とくにBSでは、不正・不明瞭な取引については、これがなかったものとして再計算されたものが、分析・査定の対象となります。

【ケース】
現預金300、受取手形200、売掛金1,000(うち200が長期未回収)、商品1,500(うち100が品痛み有)、仮払金300、建物2,000(うち300が償却不足)、有価証券500(時価価格400)、繰延資産100(実質価値なし)の会社の例

勘定科目 帳簿価格 査定額 実態金額
現預金
受取手形
売掛金
商品
仮払金
建物
有価証券
繰延資産
   300
   200
  1,000
  1,500
   300
  2,000
   500
   100
 ➡ ▲0
 ➡ ▲0
 ➡ ▲200
 ➡ ▲100
 ➡   ▲300
 ➡ ▲300
 ➡ ▲100
 ➡ ▲100
   300
   200
   800
  1,400
    0
  1,700
   400
    0
合 計 5,900 ▲1,100 4,800

なお、左右の差額の1,100は剰余金および資本金から控除されます。

そのため、この会社が資本金500、剰余金400である場合には
(剰余金計算)400 – 1100 = ▲700  
(資本金計算)500 – ▲ 700 = ▲200
となるため、実質的には▲200の債務超過状態の会社として評価されます。

以上のように、会社と個人の資産の分離ができていない場合には、金融機関からは「実質的に社長の個人事業に近い会社」と判断されます。

「黒字なのにダメ」な会社の落とし穴

「うちは黒字です」「返済も滞ったことはありません」
経営者保証解除の相談の場で、最初にこう語る社長は少なくありませんが、黒字であることと、保証解除ができることは同義ではありません。

しかし、この違いに気づかないといつまでたっても保証解除はできないままとなります。

以下では、黒字なのに保証解除ができない会社の特徴と、対策について解説いたします。

財務内容は通期で見られる

多くの経営者が見落としている点一つに「財務内容は通期で見る」というものがあります。

金融機関が企業の評価をする際に見ているのは、単年度の損益だけではなく、
安定して返済できる構造になっているか?
という点です。

例えば、黒字の大半が一時的な特別利益によるものだったり、役員報酬を極端に抑えることで無理やり利益を出していたりすると、評価は大きく下がります。

企業の利益の源泉となるのは「営業利益」です。そして、この利益から販管費や支払利息、税金などが引かれて、税引き後利益となります。

途中で株の売却益を計上したり、不自然に経費を圧縮すれば、確かに税引き後利益は黒字にできますが、それは営業の成果とはいえません。

そのため、このような内容では数字は黒字でも、「持続性がない」、「実態がない」と判断されるのです。

また、減価償却費をほとんど計上していない、あるいは設備更新を先送りにしている会社も注意が必要です。

一見すると利益は出ていますが、将来必要となる投資を考慮すると、実質的なキャッシュフローは弱いと見なされます。

銀行は、この「見えにくい将来負担」を非常に重視します。

借入構造の歪みにも注意

金融機関は、数字のよし悪しだけでなく、借り入れの内容についても注視しています。

たとえば、複数の金融機関から借り入れているにもかかわらず、返済条件がバラバラで、全体としての返済計画が整理されていないケースなどがこれに該当します。

このような場合、何とか返してはいるものの、「このまま続けられるのか」という疑問が金融機関側に残ります。

それと意外に見落とされがちなのが、社長個人への依存度です。

営業、人脈、意思決定のすべてが社長一人に集中している会社は、業績が安定していても評価が伸びません。

なぜなら、万一社長に何かあった場合、事業が継続できるかどうかが見えないからです。
保証を外すという判断は、「社長がいなくても回る会社か」という視点とも密接に関わっています。

そのため、会社の後継者がいる場合でも、力不足や経験不足の場合には、この点での評価が下がることになります。

以上のように、黒字であるのに保証が外れない会社は、数字の奥にある構造に課題を抱えているケースがほとんどです。

この課題に気づかないまま、表面的な部分だけを見て、「なぜうちはダメなのか」と悩み続ける経営者は意外と少なくありません。

税理士任せの会社が危険な理由

多くの経営者は、税務や財務のことは顧問税理士に任せています。

それ自体は決して悪いことではありませんが、経営者保証解除というテーマにおいては、
税務に強いことと、銀行対応に強いことは別物
ということを認識する必要があります。

実際、保証解除が進まない会社の多くで、「顧問の先生が大丈夫と言っていた」、「とくに問題はないと言われた」という言葉を耳にします。

ところが、銀行側の評価を見ると、まったく違う判断がなされていることが少なくありません。

典型的なNG対応の一つが、節税を最優先にした決算です。

もちろん節税は重要ですが、利益を極端に圧縮した決算書は、銀行から見ると「返済能力が乏しい内容」と映ります。

このように保証解除の判断においては、実態を正確に示すことが何よりも重要であり、過度な節税は逆効果になる場合があります。

次に多いのが、金融機関との役割分担を誤っているケースです。

税理士が良かれと思って銀行対応の窓口を一手に引き受けているものの、保証解除については深く踏み込まない。

結果として、経営者自身の意思や将来ビジョンが銀行に伝わらず、評価が止まってしまいます。

また、経営者がすべてを税理士任せにすることで、経営者自身の理解力やスキルが上がらず、いつまでたっても金融機関と話しができないという例も多く見られます。

さらに、「ガイドラインがあるから、そのうち外れるでしょう」といった根拠のない楽観論も危険です。保証解除は待っていれば進むものではなく、準備・説明・交渉の積み重ねが必要です。

それを理解せず、具体的なアクションを示せない専門家に任せきりにすることは、大きな機会損失につながります。

重要なのは、誰がどの領域を担うのかを明確にすることです。

税務は税理士、保証解除の戦略は別の視点で考える。この切り分けができている会社ほど、結果を出せるといえます。

 

こんな社長の一言で交渉は壊れる

経営者保証解除の可否は、決算書や事業計画だけで決まるものではありません。
本人には悪気がなくとも、社長の何気ない一言が、交渉の流れを一瞬で止めてしまうことがあります。
以下では、「言ってはいけない一言」の具体例を挙げ、なぜそれが問題なのかについて解説いたします。

「保証が外れないなら、借り換えます」

本人の自覚なしに言ってしまいやすいのが、このフレーズです。

社長としては交渉材料のつもりかもしれませんが、銀行側からすると「圧力をかけている」「関係性を軽視している」と受け取られかねません。

そのため、この発言が出た時点で、保証解除は“検討事項”から“リスク案件”へと格下げされてしまいます。

「ガイドラインがあるのに、解除に応じないのはおかしい」

ガイドラインには強制力はありません。そのため、最終的にどのような判断をするかは金融機関にかかっています。

しかし、交渉の中でこのような制度を盾にする姿勢があると、銀行に防御的な態度を取らせてしまいます。

また、それだけでなく、本来は味方になってもらうべき相手を、無意識のうちに対立構造に引き込んでしまう可能性があります。

「今まで問題なかったから大丈夫です」

この言葉は、社長にとっては安心材料かもしれませんが、銀行にとっては逆となります。

現所の認識が甘く、将来リスクへの認識が低いと判断され、「保証を外すのはまだ早い」ととらえられてしまう危険性が高まります。

「●●社は保証を外してもらったと聞いた」

保証解除における交渉の状況や取組みは、企業ごとに異なります。

しかし、これを理解しないで、「他社ができたなら自分も」というのはあまりに幼稚かつ自分勝手な考えです。

さらにこのような評判が広まると個人情報的な見地から金融機関の立場も危うくなる可能性があります。

そのため、金融機関としてはこのような会社に支援をしようとはしないだけでなく、その後の融資などでも協力を得られなくなる可能性があります。

スムーズに保証解除を進めるポイント

これらの説明でもお分かりいただけるように、金融機関は、社長の発言から経営姿勢そのものを読み取っています。

保証解除とは、「この社長に、保証なしで任せてよいか」という判断でもあります。
そのため交渉時には、数字以上に、言葉の選び方や対応の仕方が重要となります。

では、どう話せばよいか問えば、そのポイントは、
「要求」ではなく「相談」として切り出す
という姿勢です。

「将来を見据えて、保証の在り方についてご相談したい」
「会社の成長のために、今後の選択肢を一緒に考えたい」

こうした言葉は、銀行側に“検討する理由”を与えます。

保証解除交渉で失敗する社長の多くは、内容ではなく伝え方で損をしているといえますが、逆に言えば、言葉を整えるだけで、同じ内容でも結果を変えることができます。

 

金融機関から嫌われる資料の作り方

経営者保証解除の相談において、「資料はきちんと出しているのに、なぜか話が進まない」という声を聴くことがあります。
その原因は、資料の“量”ではなく、銀行の視点を外した資料になっていることによることがほとんどです。
以下では、注意すべき、金融機関に嫌われる資料について解説します。

数字に関する説明がない資料

嫌われる資料の中でも、最も典型的なのが、数字の説明がない資料です。

単に決算書や試算表を並べただけで、「なぜこうなったのか」「今後どうなるのか」などの説明がない資料では、金融機関もどう判断すればよいのかわかりません。
また、専門用語や横文字が多い資料も同様です。

このような資料は、内容がわかりづらいだけでなく、「読む人に配慮ができない人」と受け止められてしまいます。

事業計画に根拠がない資料

次に多いのが、事業計画の内容や数字に根拠がなく、“絵にかいたモチ”になっているケースです。

いきなり売上が急激に伸びる前提、根拠のない新規取引の発生、裏付けがないコスト削減の計画などは、「現実を見ていない」という印象を与え、保証解除どころか通常融資の評価すら下げてしまいます。

社長の想いだけが前面に出た資料

また、社長の想いだけが前面に出た資料にも要注意です。

ビジョンや熱意は大切ですが、それだけでは銀行は動きません。
「誰が」「何を」「どう実行し」「どの数字につながるのか」が整理されていないと、信ぴょう性のないものとなってしまいます。

他との整合性のない資料

そして意外に見落とされがちなのが、資料同士の整合性です。

決算書と事業計画で前提条件が違う、資金繰り表と借入残高が合わない。こうした小さなズレは、「管理が甘い会社」という印象を強く残します。

銀行が嫌う資料の共通点は、「説明責任を果たせない」ものであるということです。

保証解除は、銀行にとってもリスクとなるため、支店長もしくは本部の決済を得る必要がありますが、各担当者が判断に使える資料でなければ、検討は進みません。

しかし逆に、銀行目線で整理された資料は、それだけで大きな信頼を作り出すことが可能となります。

 

まとめ

経営者保証解除は、金融庁の「経営者保証ガイドライン」に沿って進められますが、保証解除をするかどうかを最終的に決定するのは金融機関です。

そのため、スムーズに解除をするには、金融機関の意向をくみ取り、信頼を積み重ねていくことが重要となります。

しかし中には、良かれと思ってしていた行為が金融機関の考えを無視、または逆らったものとなっていることも少なくありません。

保証が外れない理由には様々なものがありますが、今一度、自社がこれらのずれたことをしていないかを確認することをお勧めします。

119番資金調達NETでは、各企業の状況にあわせた経営者保証解除に関するサポートの他、このブログではご紹介していないテクニックについても、アドバイスしています。
随時、初回は相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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