経営者保証解除とは? 解除のためには、どんなアプローチをすればよい?

経営者保証解除とは? 金融機関がしたがらない理由は何? ブログ

皆さんの中には、「会社の借入れでさせられた連帯保証が重い」、保証がついたままでは将来が不安」とお考えの方もいるのではないでしょう?

これまで、会社の借入れについては経営者が保証をするのが当たり前となっていましたが、最近ではこうした以前の経営者の保証を解除することが可能となっています。

しかし、そのためには解除の要件だけでなく、金融機関が保証解除をどのように考え、また、どのようにアプローチするかを理解しておくことが重要です。

この記事では経営者保証解除の背景、解除の要件の他、保証がいらない融資制度や、解除を成功させるためのアプローチについて解説いたします。

 

「経営者保証解除」とは何か?

ここでは、まずは経営者保証の性質や、経営者保証により生じるリスクについて解説いたします。

「経営者保証」の性質について

これまで、経営者は会社が借り入れをするときには、連帯保証人とさせられることがほとんどでした。

この仕組みを「経営者保証」といいます。

経営者保証は、法的には民法の保証となりますが、連帯保証人には「催告・検索の抗弁権」がないため、本人とほぼ同様の責任を負うこととなります。(民法454条)

▼ 「催告の抗弁権」(民法452条) 
  先に債務者本人に請求せよと主張できる権利
▼ 「検索の抗弁権」(民法453条)
  先に債務者本人の財産に執行せよと主張できる権利

そのため、経営者保証をした場合、もし、会社が返済できなくなると、社長自身の個人の預金、不動産などが、返済の対象となってしまいます。

経営者保証により事業承継やM&Aも困難に

さらに重要なのは、経営者保証は
会社の業績が悪化したときだけ問題になるものではない
という点です。

事業承継やM&A、あるいは社長交代を考えたとき、保証が残っているだけで選択肢が一気に狭まります。

後継者が「保証を引き継ぎたくない」と言えば承継は止まり、買い手企業が「保証が外れないなら条件を下げる」と言えば、企業価値は大きく下がってしまいます。

「銀行が保証を求めるのは当たり前だ」というのは、かつては正しい考え方でした。

しかし、経営者保証があることで、
● 社長が思い切った投資や新規事業に踏み出せない
● 結果として、企業の成長や挑戦意欲が止まってしまう
という弊害が社会的な問題となってきました。

とくに、事業承継の現場では、後継者候補が「保証を引き継ぐなら社長にはならない」と辞退し、黒字企業であるにもかかわらず廃業に追い込まれる例が増えています。

これを受けて、金融機関側でも
「経営者保証があることで、社長が必要なリスクを取れなくなり、結果として企業成長を阻害している」
ということを理解し始めました。

 

「経営者保証に関するガイドライン」の意義とは

経営者保証ガイドラインは、経営者が保証解除を実現するうえで欠かせない指針です。ここでは、このガイドラインの成立の背景や主なポイントについて解説いたします。

「経営者保証に関するガイドライン」成立の背景

以上の社会的な流れの中で整備されたのが、「経営者保証に関するガイドライン」です

「経営者保証に関するガイドライン」は、2013年12月5日に公表され、2014年2月に適用が開始されました。

このガイドラインの中身を簡単に説明すると
「中小企業が融資を受ける際、社長個人の保証を外したり、万が一の際のリスクを軽減したりするためのルール」
となります。

なお、このガイドラインは、国会で成立する「法律」ではなく、日本商工会議所と全国銀行協会が中心となって策定した「自主的なルール」です。

そのため、法律ではないものの、現在は金融庁の監督指針にも組み込まれており、銀行側が無視できないほどの影響力を持っています。

ガイドラインの3つの柱(保証を外すための条件)

銀行から既存の融資の保証を外すためには、以下の3つの対応が求められます。

  • 法人と個人の分離
    会社の経理と社長個人の家計を明確に分けること。(例:会社のお金を私的に流用しない、会社にタダで貸し付けないなど)

  • 財務基盤の強化
    利益を出し、借入金を返済できる能力があること。または、十分な自己資本(内部留保)があること。

  • 透明性の高い情報開示
    金融機関に対して、試算表や事業計画などの財務状況を定期的、かつ誠実に報告すること

これは、経営者保証を原則とするのではなく、
「不要な場合には取らない、既にある場合も見直す」
という方向性を明確に打ち出したものです。

そして重要なのは、このガイドラインが「経営者を甘やかすため」の制度ではないという点です。

またこれは、銀行にとっても合理的な仕組みであって、決して一部の経営者を特別扱いするものではありません。

確かに、すべての金融機関が同じスピードで変わっているわけではありません。

しかし、少なくとも保証解除の相談を受けたとき、金融機関はこのガイドラインを無視できなくなっています。

つまり、ガイドラインとは「自動的に保証が外れる魔法の制度」ではなく、
正しく準備した経営者が、正面から交渉するための武器
であるといえます。

 

経営者保証が不要の融資制度

このガイドラインの制定を受けて、現在では多くの金融機関で、経営者保証を取らない融資制度ができています。
以下では、そのうちの代表的なものについてご紹介します。

日本政策金融公庫の保証が不要な融資制度

制度名 融資の概要
新規開業・スタートアップ支援資金 最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)
新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象
経営者保証免除特例制度 税務申告を2期以上実施している方で赤字・債務超過でない等の要件を満たす方が対象
挑戦支援資本強化特別貸付 15億円 新規事業、経営改善、企業再建などに取り組む方で一定要件を満たす方が対象
マル経融資 2,000万円 商工会、商工会議所等の長の推薦を受けた方が対象

信用保証協会の保証が不要な融資制度

制度名 保証の概要
事業者選択型経営者保証非提供制度 税務申告を2期以上実施している方で赤字・債務超過でない等の要件を満たす方が対象
事業承継特別保証制度 一定要件を満たす事業承継を予定する法人が対象

現在、日本政策金融公庫や信用保証協会では、一定の条件を満たすことにより、代表者の保証を不要とする融資・保証制度を取り扱っています。

しかし、必要な条件を満たせない場合には、なお、これまで通りに経営者の保証が必要となることに注意が必要です。

 

なぜ、金融機関は「保証解除」に後ろ向きなのか?

経営者保証ガイドラインができた後でも、まだ、多くの金融機関では、保証解除に積極的とは言えない状況です。
ここでは、なぜ金融機関が保証解除に消極的なのかの理由について、解説いたします。

金融機関にとっての保証解除とは?

ガイドラインが制定された後でも、多くの金融機関では、保証を外したがらないというのが実情です。

また、実際に、銀行の担当者が自ら積極的に「保証を外しましょう」と提案してくることは、ほとんどありません。

そのため、多くの経営者が、「銀行は保証を外したがらない」「保証解除の話をすると嫌がられる」と感じています。

その理由としては、金融機関側にとって「管理・説明がしにくくなる」ということが挙げられます。

経営者保証は、金融機関にとって単なる保全のためだけの仕組みではありません。

保証があることで、融資後の管理がしやすくなり、万一の際の説明責任も果たしやすいというメリットがあります。

つまり、保証は「判断をシンプルにするための道具」でもあるのです。

そのため、特別な理由がなければ、あえて外す提案をする動機が生まれにくいのが実情です。

金融機関のYESを引き出すには?

このように金融機関には、経営者保証をはずたくないという思惑がある一方、これに応じなければならないというジレンマがあります。

通常、すべての金融機関は、金融庁の指導・監督を受けていますが、その際に
「なぜその会社に保証を求めたのか」
「解除できない合理的理由は何か」
などを説明する必要があります。

これに対して、以前のように「中小企業だから」「前例がないから」などの理由は通用せず、明確な理由にもとづいた判断や対応が求められます。

つまり、中小企業側が次のような行動をとった場合、銀行はそれを真正面から否定しづらくなります。

 ▼  自社の財務状況を正確に把握する
 ▼  ガイドラインに沿った準備を行う
 ▼  「保証が不要である合理的理由」を提示する

しかしそれでも、担当者が即答で「解除しましょう」ということはほとんどないでしょう。

なぜなら、保証解除は、
支店判断だけでは完結せず、上席や審査部門の確認が必要になる
ケースが多いからです。

この構造を理解せずに、「なぜ外してくれないのか」「ガイドラインがあるじゃないか」と感情的に迫ると、交渉はうまくいきません。

最悪、銀行側から、“扱いづらい社長”という評価を受けてしまう可能性すらあります。

しかし逆に、銀行が「この会社なら外しても説明ができる」と感じる材料を、丁寧にそろえて提示すれば話は変わります。

このように経営者保証解除は、単に準備ができたからしてもらえるというものではなく、そのうえで金融機関の理解と協力を得る必要があります。

手間と時間はかかりますが、
銀行が安心してYESと言える状況を作る作業
と納得したうえで根気よく進めていくことがポイントとなります。

多くの社長は、目の前の資金繰りや売上、採用、取引先対応に追われています。その中で、保証の見直しは「今すぐ困らないこと」として後回しにされがちです。しかし、いざ問題が表面化したときには、もう選択肢が残されていないことがほとんどです。

例えば、業績が悪化してから保証解除を相談しても、金融機関は慎重にならざるを得ません。「もっと早く相談していれば…」という場面を、私は何度も見てきました。保証解除は、調子が悪くなってからではなく、比較的安定している時期にこそ進めるべきものなのです。

 

保証解除は、知らないこと自体がリスクの時代

経営者保証解除について「知らなかった」「自分には関係ないと思っていた」。
このような経営者の方は多いと思いますが、実はこの考えが経営上の損失となっています。

なぜなら、保証解除は“やらなかったこと”自体が、後から取り返しのつかない差になるテーマだからです。

事業承継やM&Aについては当然ですが、それだけでなく、保証が残っていることで、金融機関との関係性にも見えない差が生まれます。

保証のない会社は金融機関から見れば、いわば「信用力の高い優良会社」といえます。

そのため、保証を前提とした融資しか受けられない会社と、保証なしでも評価される会社では、金利などの条件やスピード、提案内容に違いが出てきます。
また、その事実が周囲に伝われば、取引先が見る目も違ってきます。

このように保証解除は、直接的な影響だけでなく、取引条件や周囲の評価などといった、目に見えない部分でも会社に貢献することとなります。

しかし、ここで強調しておきたいのは、保証解除は「特別な会社だけの話」ではないということです。

むしろ、真面目に経営を続け、数字を積み上げてきた会社ほど、検討すべきテーマであり、それを知らずに動かないままでいることが、最大のリスクであるといえます。

 

まとめ

経営者保証はこれを解除できない場合は、社長の個人財産にリスクを生じるだけでなく、事業承継やM&Aを行う上での足かせとなります。

解除のためにはガイドラインが示す3つの条件をクリアーする必要がありますが、それだけではなく金融機関の信頼を獲得することが何よりも重要な対策となります。

119番資金調達NETでは、各企業の状況に合わせた経営者保証解除に関するサポートの他、このブログではご紹介していないテクニックについても、アドバイスしています。
随時、初回は相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。
プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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