事業計画書を作るその前に…
「自己資金も揃った」、「場所も確保できた」
さあ、融資を申し込もう!とお考えの方。
チョット、待ってください。もしあなたが「とりあえず、空欄を埋めていけばよいだろう。」という感覚で事業計画書を作ろうと考えているのであれば、まずはここに書かれていることを読んでからにしてください。
なぜなら、創業融資の事業計画書には、計画を組み立てるための順序があるからです。
そもそも、事業計画書の用紙は順番通りに書き込めば計画書が作れるという仕組みにはなっていません。
なので、この順番を無視して取り掛かってしまうと、かなり高い確率で「つじつまが合わない」、「こんなはずじゃなかった!」ということになります。
そうならないためにも、まずはここでお伝えするステップとチェックをしてから、計画書の作成に臨んでいただきたいと思います。
※ 参照:最新の実例見本で解説! 飲食店創業融資のための事業計画書(創業計画書)の作成
STEP1: 申込額全体のバランスを考える
創業融資、特に日本政策金融公庫の新創業融資制度を申し込む場合に、まず、初めに考えておかなければならないことがあります。
それが「自己資金と融資額のバランス」です。
新創業融資制度では、最大で自己資金の9倍の融資を申し込むことができますが、実際にそのような融資が出ることはほぼありません。
また、はじめからそれを狙って申し込んだのでは、成功率はかなり低いものとなってしまいます。
一般的に言われている安全な融資の申込額の限度は「自己資金額の3~4倍」とされています。
これと、現時点でざっくりと見積もった費用の総額が同じくらいならばよいのですが、費用が自己資金額の3~4倍の範囲を大きく超えてしまうのであれば、「その計画を縮小するか?」もしくは「費用に見合うだけの自己資金を貯める」という見直しが必要となります。
つまり、融資の確率をあげるのであれば、できるだけこの数式の範囲に収まる設計をした方が確立が上がるということになります。
なお、たまに、「(本当は必要ないけど)」できるだけ多くの申込みをしよう」とする方がいらっしゃいますが、これはお薦めできません。
なぜなら、日本政策金融公庫や信用保証協会では、事業の種類や規模ごとの標準的な売り上げや、経費を把握しているので、これをムリに超える計画は「実現性に乏しい」と判断されてしまうからです。
また、なんでもかんでも経費を計上して借り入れ額を増やした場合、それは必ず計画全体のひずみとして表れてきます。
なので、創業融資は「妥当な範囲で、必要な額を申し込む」ということを基礎にして、このバランスを確認してから組み立てていく必要があります。
※ 参照:80%以上の人が知らない!新創業融資制度の「自己資金」の疑問をすべて解説!
STEP2: 運転資金と設備資金のバランスをとる
大枠での資金のバランスの確認ができたら、次に考えるべきは「設備資金と運転資金のバランス」です。
通常、運転資金や設備資金には、次のものが該当します。
家 賃(仲介手数料、礼金を含む)
仕入代 人件費 水道光熱費 交通費
リース料 宣伝広告費 雑 費 など
【設備資金の例】
保証金または敷金 内・外装費
厨房設備 車の購入費 など
創業融資の申込みでは「運転資金は〇〇円以下でなくてはならない。」とか「設備資金はこうでなければダメ」といった決まりはないのですが、常識的に考えた場合の限度というものは存在します。
例えば「開業後の資金繰りが不安なので運転資金は1年分欲しい」とか「内装費だけで予算オーバーになりそうだから、厨房設備はいらない」なんて人がいたら、やっぱりおかしいと思いますよね?
これと同じように運転資金については、無理なく申し込める目安というものがあります。
その目安とは、「原則、3ヶ月分。長くても4ヶ月分」となります。
なぜ、飲食店の運転資金はこの程度がよいのかといえば、それは本来「飲食店が運転資金の不要な業種だから」という理由があります。
そもそも、運転資金とは、掛けで販売した売り上げが現金になって戻ってくるまでの間をつなぐための資金です。
しかし、飲食店や一般の小売業では、販売は基本的に現金で行われるため、資金繰りが悪くなるということは、原則としてありません。そしてこのことは金融機関も承知しています。
なので、本来、つなぎのための資金が必要ない飲食店で運転資金を1年分も欲しいというのは、極端なことを言えば金融機関に対して「1年間売り上げが立ちません!」と言っているのと同じことになるわけです。
とはいえ、仕入れから売上げまでの間に多少のタイムラグもあり、また、創業してすぐにお客で満席になるということがないのは金融機関側もわかっているので、その状況を汲んだ金額が「3~4ヶ月分」ということになるわけです。
(1ヶ月分の運転資金 ✖ 3~4ケ月分)
では、設備資金についても同じようなことがいえるのかといえば、こちらについてはそういうわけではなく、「営業に必要なものであれば申し込んでOK」ということになります。
設備にかかる費用は運転資金とは違って、これがないと営業ができなくなってしまうからです。
とはいえ、いくらでも購入してよいということではなく、先ほどの総額の目安の範囲に収まっていることが必要となります。
つまり,これを式としてあらわすと次のようになります。
(1ヶ月分の運転資金 ✖ 3~4ケ月分) + (適正な設備の資金) ≒ 自己資金の3~4ヶ月分
これはあくまでも一つの目安ではありますが、事業計画を作る際にはこれををあまり大きく外さない方がよいでしょう。
※ 参照:新創業融資制度の使い方完全解説!自己資金がなくても0K?制度融資との関係は?
STEP3: 融資の対象とならないものは除外する
以上の計算をするうえで注意しなければならないのが、「申込前に支払った費用は融資申し込みの対象にならない。」というルールです。
このルールはすべての融資で共通しているのですが、これを知らずに支払い済みの費用を申し込んで、結果的に融資額が大幅に少なくなってしまったという方が少なくありません。
例えば、令和元年9月1日にテナントの契約金100万円と内装工事の手付金50万円を支払い、令和元年10月1日に融資を申し込んだ場合は、前者の150万円については融資を申し込めないことになるわけです。
なので、この点を理解した上で運転資金や設備資金の計算をしないと、後になって「これは対象にならないですよ」と言われてしまうことになりますので、ご注意ください。
STEP4: 費用の根拠を用意する
創業計画書事業計画書に記載した金額については、運転資金・設備資金を問わず、必ずの根拠を示さなければならません。
その場合、それぞれについての考え方は次の通りとなります。
設備資金以外のすべてのものが運転資金となります。
このうち見積もりがあるものについては見積書をつけて金額の根拠としますが、見積書のないものについてはそれぞれ自分でその根拠を算定します。なお、水道光熱費など具体的な計算が難しいものについては、ネットで簡易的に計算ができるサイトがありますのでこれらを使っても構いません。また、20万円以下の備品等については、アマゾンなどで商品価格がわかるページをプリントアウトしたものを見積もりとして使ってもOKです。
例
人件費
@1,000円/h × 7h × 18日 = 126,000円
交通費
A @500円(片道) × 2 × 18日 = 18,000円/月
B @300円(片道) × 2 × 18日 = 10,800円/月
購入予定の設備や内装費などについて、販売業者から正式な見積もりをもらってこの金額を根拠とします。
ただし、あまり高額でないものについては、運転資金の場合と同様、ネットの商品価格がわかるページを見積書として利用しても構いません。しかし、見積書には有効期限があるので、この期間内に提出するようにしてください。
STEP5: 返済可能な利益を計算する
ここまで準備ができたら、最後にするのが「返済ができる利益を計算する」という作業です。
融資を受ければ、当然その後に返済をしなければならないわけですが、毎月の返済額を上回る利益を出すことができなければ計画自体が成り立ちません。
そのためいくらの売り上げが見込めて、どのくらいの原価や費用がかかるのかを試算しておく必要があります。
まず、返済に充てることのできるものは何かを考えた場合、その源となるのは
「売り上げから原価と経費を差し引いて残った額 + 購入した設備の減価償却額」
となります。
また、金融機関でもこの式で得られた額を返済の原資として判断しています。
なお、減価償却の計算のためには、その設備の耐用年数がどのくらいなのかを知る必要がありますが、この点については国税庁の「減価償却資産の耐用年数表」を参考にしてそれぞれの設備品について計算します。
但し、内装設備などについては、すべての部材の計算をするととても複雑なものとなってしまいますので、このような場合には簡易な方法での年数を使って計算します。 ※ 状態に合わせていずれかを使用
飲食店の内装費の耐用年数(簡易式)
店舗が木造・合成樹脂造のもの | 22年 |
店舗が鉄骨鉄筋コンクリート造・ 鉄筋コンクリート造のもののうち 延面積のうちに占める木造内装部 分の面積が30%を超えるもの その他のもの |
34年
41年 |
店舗が金属造のもののうち 3㎜以下のもの 3㎜を超え、4㎜以下のもの |
19年
25年 |
たとえば600万円を5年で返済する場合には、年あたりでは120万円、月あたりでは10万円の返済が必要となります。(ここではとりあえず、利息の支払いは考えないこととします。)
仮に、あなたが1ケ月に2万円の減価償却ができる資産を持っているとすれば、残りの8万円については毎月の事業からの利益でこれを賄えばよいということになります。
しかし、もし、「7万円/月の利益しか出せない」計画となっているのだとしたら、金融機関としては600万円という金額の融資をすることはできません。
なので、この場合には、以下の計算で求められた程度にまで融資額を減額しなければならないことになります。
(7万円+2万円)×12ケ月 × 5年 = 540万円
このように、いくらまで資金調達が可能かについては、およそこの式でわかるわけですが、これは逆にいえば、「この範囲でしか融資はされない可能性が高い」ということを意味します。
以上のように、「いくらまで借りられるか?」は、いくらの利益と減価償却の額が見込めるのかということにより決まるわけですが、ここの部分がシッカリできていれば金融機関にも、信ぴょう性のある計画だとみてもらいやすくなるわけです。
※ 参照:最新の実例見本で解説! 飲食店創業融資のための事業計画書(創業計画書)の作成
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