創業融資の担保と保証。必要それとも不要?

創業融資で担保と保証 日本政策金融公庫

以前の創業融資では、その金額や借入人の信用力に応じて担保または保証人を求められましたが、最近では無担保・無保証の融資がだいぶ増えています。

はいえ、いまだに融資の原則は有担保・有保証であり、創業融資の場合もまったく無関係ではありません。

ここでは、担保・保証の意味や、金融機関によって変わる無担保・無保証の取り扱いの違いについてご説明いたします。

担保について

担保とは何か?

「担保」とは、融資や資金調達の際にその相手の信用力が十分でない場合に、それを補完する目的で担保権の設定を行うことを言います。

一般的に利用される担保権には次のようなものがあります。

◆ 抵当権
◆ 根抵当権
◆ 質 権

抵当権   

「抵当権」とは、決まった金額の融資を受ける場合に土地や建物といった不動産に設定される権利です。

この権利を設定されても引き続きその土地や建物を使用することができる点で質権と異なります。
しかし、返済期限までに返済ができない場合には、その土地・建物は競売され、その代金が返済に充てられることになります。

根抵当権 

「根抵当権」とは、あらかじめ担保に入れる不動産の価値を算定し、融資できる金額の上限(これを極度額といいます)を定めて、その範囲内で何度もお金を借りたり返済したりするタイプの権利をいいます。

抵当権は初めに決めた融資額について権利の設定をするため、返済が済んだときには抹消されます。
これに対して、根抵当権は返済が済んで借入れがゼロとなっても抹消されず、また、再度、融資を受けるときに利用することができるという部分で抵当権と異なります。

抵当権と根抵当権の違い

抵当権】
1,000万円の融資と抵当権の設定 → 1,000万円を返済 → 抵当権の抹消根抵当権】
1,000万円の融資と根抵当権の設定(極度額1,000万円) → 1,000万円を返済 → 根抵当権は抹消されない → 再度1,000万円を融資 → 以前の根抵当権をそのまま使える

なぜ、このような違いがあるかといえば、本来、抵当権は弁済が終われば抹消されるものです。

しかし、何度も借入れ→返済をするような場合には、そのたびごとに抵当権を設定→抹消しなければならず、手間も費用もかかります。(例:住宅ローン)

そのため、このような継続的な借り入れ→返済が見込まれている場合には、一つの権利を何度も使い回せた方が便利です。(例:商売上の資金の借入れ)

このような理由から1回きりの取引で終わらず、継続的な取引をする場合には抵当権が設定されます。

質 権    

「質権」とは、金融機関が担保のために、融資が返済されるまで借主の所有する土地や建物その他動産を占有する権利のことを言います。
万が一、約束通りに債務が弁済されない場合には、抵当権と同様、目的物を売却することで債務の弁済に充てます。

質権と(根)抵当権の違い

◆ 質 権    金融機関が担保の目的物を占有するため、借主は自らその土地・建物を使えない。
◆ (根)抵当権 担保の目的物を占有しないため、借主が自らその土地・建物を使える。


このうち金融機関により設定されるのは、ほとんどが抵当権か根抵当権のいずれかとなります。

ただし、融資の際に加盟する団体生命保険については、質権が設定されるのが一般的です。

保証について

保証とは、融資や資金調達の際にその相手の信用力が十分でない場合に、それを補完する目的で他人を連帯保証人とすることをいいます。

保証人には個人だけでなく、法人もなることができます。

なお、保証の形式には、通常の保証と連帯保証があり以下のような違いがありますが、一般的に求められるのは連帯保証となります。

保証と連帯保証の違い

通常保証-「催告や検索の抗弁権」、「分別の利益」などの債権者に対抗できる一定の権利を有する。
連帯保証-通常保証のような抗弁権がなく、金融機関に対し借りた本人と同じ責任を負う。

 

日本政策金融公庫と制度融資(信用保証協会付融資)による違い

日本政策金融公庫と制度融資とでは、担保や保証の扱いについて次のような違いがあります。

日本政策金融公庫
原 則-融資は、有担保・有保証が原則です。
例 外-以下に挙げるような融資については無担保・無保証となります。
〇 新創業融資制度
〇 小規模事業者経営改善資金(マル経)
〇 挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
〇 経営者保証免除特例制度
〇 生活衛生改善貸付
〇 担保を不要とする融資制度など

制度融資
原 則-8,000万円まで無担保・無保証となります。
例 外-この限度を超える融資については、担保か保証が必要。


なお、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、法人が借入れをした場合には、その代表取締役は連帯保証人にならないことができます。(但し、この場合には代表取締役が連帯保証人になる場合よりも0.1%分金利が上がります)

制度融資では、そのような取り扱いはありません。

創業融資における担保と保証について

創業者の方が日本政策金融公庫の新創業融資制度または制度融資を使って融資を申し込む場合には、担保や保証人は不要となります。

しかし、新創業融資制度ではその無担保・無保証枠が3,000万円(うち運転資金1,500万円)となっています。

したがって、3,000万円または運転資金で1,500万円を超えるような融資を申し込むような場合には、この無担保・無保証枠が使えなくなるため、金額に応じた担保または保証を提供しなければなりません。

また仮に3,500万円の融資を申し込んだ場合、3,000万円までの分については新創業融資制度を使って、残りの500万円について担保や保証を用意すればよいと考えがちです。

しかしこの場合には、そのような部分的な適用はできないため、3,500万円の融資に見あった担保か保証を用意しなければならないこととなります。

なお、新創業融資制度と制度融資の違いについては、「これを知れば創業融資が2倍になる!日本政策金融公庫と信用保証協会融資の違い。」をご参照ください。

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プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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