創業融資における「自己資金」とは?


前回コラムでは、創業者の方が利用できる日本政策金融公庫の「新創業融資制度」と制度融資という2つの融資制度をご紹介しました。

その要件の中で「自己資金」という言葉が出てきましたが、この「自己資金」とは「融資を申し込もうとする場合に最低限、必要となる自分で貯めた資金」のことをいます。

特に、日本政策金融公庫の「新創業融資」を利用しようとする場合は、必須の要件となるもので、もう一度この要件を見てみると次のようになります。

新創業融資制度の自己資金の要件
「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できること。」

この場合の創業資金総額というのは、創業をするためにかかるすべての費用を指します。

例えば、2,000万円かけて飲食店をしたいという場合、そのうちの1/10である200万円の自己資金があれば、残りの1,800万円について融資を申し込めるということになります。

なので、同じケースで自己資金が100万円しかなければ、申し込めるのは900万円となり、全体で1,000万円の事業しかできないということになります。このように自己資金が多ければそれに応じた大きな額の融資の申し込みができるのに対して、これが少ない場合にはそれに見合った額での申し込みしかできないということになります。

 

「自己資金」になるもの、ならないもの

それでは自己資金とは、どういうものであればよいのでしょうか?
資金という言葉からすると、一見、預貯金しかだめなように思えますが、意外とその範囲は広く預貯金以外でも、次のようなものは自己資金として認められています。

<自己資金として認められるものの例>
 ① 国債その他、換金性のある有価証券
 ② 生命保険等の解約時返却金(現時点での解約金額)
 ③ 株式会社などを設立した場合の資本金
 ④ 親などからもらったお金
 ⑤ 現物出資した場合のその物の価格
 ⑥ 退職金  

<自己資金として認められないものの例>
 ① 他から借りてきたお金
 ② 他の金融機関から融資を受けたお金
 ③ 現金(俗に言う「たんす預金」)
 ④ 出所のわからない振込または入金された資金

 

 いろいろな「自己資金」のケース


1.金の現物の場合

以前、私のお客様の中に「金の現物を持っているのですが、これは自己資金になりますか?」というケースがあったので、日本政策金融公庫に確認したところこのようなケースでも、信頼できる貴金属商による価格の評価をした証明書などがあればOKということでした。

つまり、正式な評価があれば売るまでしなくともよいということです。

2.預貯金の場合

自己資金の代表といえば預貯金なのですが、通帳に入ってさえいればすべて大丈夫かといえばそういうわけではなく、給与などを貯めた、いわゆる出どころのハッキリしたお金であることが必要となります。

なので、仮にお金が通帳に入っていたとしても、よくわからないところから振り込まれているものや、ある日ポンと残高が増えているような場合には、これらは自己資金としてみてもらえません。

要は、その入金された「理由を説明できるお金なのかどうか?」ということが重要となります。

3.現金の場合

奇妙に思われるかもしれませんが、現金は原則として自己資金として認められません。
なぜなら、現金はそれをどこから持ってきたものかわからないからです。

なので、たまに「家で貯めたお金(タンス預金)です。」といってこれを認めてもらおうとする方がいますが、これはほぼ認められません。
もしこれを認めてもらうためには、そのお金を通帳に入金してから最低6ケ月~1年程度はそのまま置いておくことが必要となります。

4.株式会社などを設立した場合の資本金の場合

株式会社などを設立した場合の資本金については、通常は問題なく自己資金として認められますが、ただすべてのケースで認めてもらえるわけではありません。たとえ、会社登記簿謄本に資本金が記載されている場合でも、日本政策金融公庫ではその会社の発起人(資本金を出資した人)が間違いなく出資したものなのかどうかを発起人の個人通帳から確認を行います。

なので、一時的に他から持ってきた資金を使って資本金を大きくしている場合や、資本金は大きいけれど実際には休眠している会社を買い取ったような場合では、「見せ金」(実体のないお金)として判断されることになります。

5.親などからもらったお金の場合

親などからもらったお金については意外に思われるかもしれませんが、これについてはほぼ問題なく自己資金として認めてもらえます。

それをどのように確認しているかといえば、一般的には贈与者(親等)に直接、電話して確認する他、場合によっては、親の通帳を確認して間違いなくその資金を贈与しているのかといった確認していることが多いようです。

6.現物出資によって出資している場合

「現物出資」とは、会社を設立する際などに現預金以外のもの(つまり、現物)をもって出資に当てることをいいます。
例えば、会社の設立にあたって、個人で所有している車などを会社の財産として提供するようなケースがこれにあたります。

ただし、これを会社の設立時に行う場合には、あらかじめその旨を定款に記載しておく必要があり、また、その場合の車の価格は中古市場で実際に売り買いされている金額と同程度のものとする必要があります。

 

合法的にできる「自己資金」の増加法


以上の説明で、「自己資金がどういうものなのか?」、「どんな種類があって、どんな
点に注意しなければならないのか?」がおわかりいただけたと思います。

しかし、これから創業しようという方の中には「自己資金が少なくて、思うような額の融資を申し込めない」、「あともう少し、自己資金を増やしたい」という方も少なくないかと思います。

そこで、ここではこのような方のために「合法的に自己資金を増やす方法」をご紹介します。

1.会社を作って協力者(出資者)を数多く集める。

そもそも会社というものは、複数の発起人からの出資により設立されるのが原則です。
しかし、現在は一人でも会社の設立ができるようになったことから、多くのケースで出資するパターンがほとんどとなっていますが、これだけでは思うような資金が集めにくい場合も少なくありません。

そこで、のような場合には、一人あたりの金額は多くなくともよいので「できるだけ多くの人から出資を集める」というのが、基本的な解決策となります。しかし、この場合には、あまり自分の出資額が少ないと経営権が不安定になるに関する問題も生ずるため、これについての対策もしておく必要があります。

2. 現物出資を併用する。

前項の6.でもご紹介したように、会社の設立時に資本金とすることができるのは、金銭だけではありません。自動車や什器といった、発起人個人の財産など出資の目的とすることも可能です。このような出資の方法を「現物出資」といいます。

この方法を利用すれば、手持ちの預金に加えてさらに自己資金を大きくすることができます。
その詳しい手続きについてはここでは省きますが、現物出資を利用した場合の融資審査のポイントは以下のようになります。
・ 設立時の定款にキチンと現物出資の内容が記載されていること。
・ 現物出資の評価は、時価相場と同程度の額になっていること。(相場より不当に高いなどはダメ)
・ 現物出資だけでなく、すぐに使える手元資金も用意できていること。

最後の「現物出資だけでなく、すぐに使える手元資金も用意できていること」がなぜ必要かといえば、それは現物出資による財産は対外的な支払いには利用できない、つまり運転資金にはならないからです。
したがって、事業計画上はこれがなくともある程度の経営がまかなえるだけの資金があることが必要となります。

3.事業開始前に支払った費用を自己資金とする(「みなし自己資金」の活用)

2.の方法は、手っ取り早く自己資金の額面を増やすにはいい方法なのですが、「会社の設立時でないと余計な登記費用がかかる」、「主に中古品が出資の対象となるので大きな金額になりにくい」、「個人事業の場合には使えない」などといった制約があります。

そこで、自己資金を増やす最後の手段が「みなし自己資金」の活用です。

この「みなし自己資金」とは何かといえば、「融資の申込み前までに事業のために使った費用がある場合には、これも自己資金として認める。」というものです。

たとえば、事業の開始前に支払った原材料の代金やHPの作成料などの外、テナントの契約にかかった手付金や、先行して行った内外装の費用などがこれに該当します。しかし、そのすべてが認められるわけではなく、会社の設立にかかった費用(定款認証代、印紙代、登録免許税、専門家に対する報酬)や、事業との関連性か薄いもの(打ち合わせのた目の食事代や接待費)などについては、みなし自己資金として認めてもらえないので注意が必要です。

したがって「せっかくお金を貯めてきたが、やむをえず事業の経費を前払いしてしまったので、通帳の残高が当初よりだいぶ減ってしまった。この場合、現在の残高でしか自己資金として認められないのではないか?」と心配される方がいますが、これらの先に支払った費用が事業に関するものであれば、その分も自己資金として認めてもらえるので大丈夫ということになります。

 
 Q  1ケ月前の自己資金額  500万円
        ↓  (事前に事業に関する経費を300万円支払った)
    現在の自己資金の残高  200万円なってしまのでは?

 A  自己資金は、現在の残高200万円+事前に支払った経費300万円(これがみなし
           自己
資金)=500万円としてカウントできる。

なお、いくら事前に支払ったものが自己資金として認められるといっても、これをキチンと自己資金として認めてもらうためには支払ったものについての領収書が必要となります。もし、領収書の出ないもののような場合には、支払った日付と金額と用途を記録しておけばOKです。

このように、自己資金はやり方によっては合法的に増やすことができます。
しかし、基本となるのは自分でコツコツ貯めたお金となりますので、早い時期からこれらの記録を作っておくことが重要となります。

なお、以上は日本政策金融公庫の融資を想定した場合の話となりますが、信用保証協会を利用する制度融資の場合では、それを主宰する都道府県や市町村により自己資金として認められるものや範囲が異なりますので、ご注意ください。

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