これまで日本の金融機関では、過去に廃業歴のある方に対する融資を行って来なかったため、
せっかくそれまでに培った経験や人脈を生かして、新たな事業にチャレンジするという途が閉
ざされていました。
けれど、これでは過去の経験という貴重な財産を捨ててしまうだけでなく、新たに事業に再度、
チャレンジしたいという方の意欲の芽を摘むことになってしまいます。
そんな中これらの廃業歴のある方についても、事業家としての再起のきっかけを与えようと登
場したのが「再チャレンジ型」の融資制度です。
現在この「再チャレンジ型」の融資制度には次の2種類があります。
1) 日本政策金融公庫の「再チャレンジ支援融資」
2) 信用保証協会の「再挑戦保証制度」
日本政策金融公庫では、2009.4.2にこの問題の解決の糸口となる制度を発表しました。
それが「再チャレンジ支援融資」です。
これにより、過去に「破産歴」や「廃業経験」のある方であっても、一定の要件を満たせる
場合には、再チャレンジに必要な融資を受けることができることとなりました。
では、本当のところ、その使い勝手はどうなんでしょうか?
利用できた場合、利用できなかった場合とケースにより結果はそれぞれのようですが、それで
もこの制度で融資を受けたという成功例が増えてきているのも事実です。
そこで119netでは、これらの成功例や日本政策金融公庫の担当者から直接、聞き取った情報を
踏まえ、この制度についての解説をしてみたいと思います。
再チャレンジ支援融資の主な内容
【 対象者 】
新しく事業を始める人、または事業を開始してからおおよそ5年以内で、次に挙げるすべて
の要件に該当する方
① 廃業歴のある方
② 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みのある方
③ 廃業の理由・事情がやむをえないものである方
これだけでは少し抽象的なので、もう少し具体的に説明します。
① 「廃業歴のある」こと
ここでいう「廃業」とは、破産・民事再生などの法的整理をされた方だけでなく、
一般的な資金繰りの困窮による廃業や、多額の負債により事業継続が不能となっ
た場合などを含みます。
② 「廃業時の負債が、新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みのある」
こと
これについては、後の章でくわしく述べます。
③ 「廃業の理由・事情がやむをえないものである」こと
これは廃業に至った理由が、単なる経営上の困難ということではないこと、つまり
「無許可での営業による摘発」や「犯罪行為による摘発」などによる廃業のような
違法な行為にもとづく廃業でないことを意味します。
【 融資の内容 】
融資の限度額 : 2,000万円
資金の使い道 : 「新たに事業を始めるため」または「事業開始後に必要となる資金」
金利その他 :
| ( 条 件 ) |
【固定金利型貸付】 |
【実績連動金利型貸付】 |
| 利 率 |
基準利率 |
特利 H
融資後2年間:0.30%
融資後3年目以降:
1.05~4.75%
|
返済期間
<うち据置期間> |
■設備資金
15年<3年以内>
■運転資金
5年<1年以内>
※特に必要な場合は7年 |
■設備資金・運転資金
7年<2年以内>
融資後2年間は利息のみの
支払いとなります。 |
| そ の 他 |
◆返済方法について、固定金利型貸付または実績連
動金利型貸付のいずれかを選択可。
◆固定金利型貸付の場合は、返済期間によって異な
る利率が適用。
◆実績連動金利型貸付の場合は、据置期間満了前に
売上高増加率によって営業状況を判定し、一定の
区分に従ってご融資後3年目以降の利率を決定。 |
取扱期間 : 平成23年3月31日まで
担保・保証 : 要相談(原則として必要)
【 利用上の注意点について 】
以上の概要からもわかるように、この制度を利用しようとする場合にはいくつか注意しなけ
ればならないことがあります。 そのポイントは、大きくわけて次の5つとなります。
① 利用上の条件について
利用の条件について上記のとおりです。
② 金利について
この制度では、利用者が「固定型」か「実績連動変動型」かの、いずれかの金利を初め
に選択することとなります。
これは一見すると、据置期間中の金利については、固定型が「基準金利」であるのに対
し、変動型は当初の2年間については0.3%と大幅に優遇されているため、ついこちら
を選びたくなります。
しかし、ここで木を付けなければならないのは、変動型を選択した場合には、据置期間
の経過後に適用される金利は、見直し時の企業の業績により、大きく変わってしまうと
いうことです。
ちなみに、変動型を選択した場合の3年目からの金利は、業績の状況によっては最高で
4.75%まで上昇します。
現時点では業績好調な企業も、3年後の状況はわかりません。
また、制度の特性上、そのときになって「やっぱり、固定へ切り替え」というのはでき
ません。
したがって、この制度を利用する場合は、この点についての十分な注意が必要です。
③ 返済期間について
返済期間については、固定型が最長15年まであるのに対し、実績連動変動型では7年ま
でとなっています。
再チャレンジを目指す企業などでは業績は未だ安定しておらず、利益もそれなりという
ところが多いと思いますので、この点からも余裕を持った返済期間を選べる固定金利型
が安心といえます。
④ 担保・保証人について
この制度は「無担保・無保証人」制度ではありません。
よほど借入額が少ないなどの場合でない限り、上記のいずれかを要求される可能性があ
るので、利用にあたっては事前の準備が必要です。
⑤ 取り扱い期間について
この制度は無期限で取り扱われるわけではなく、平成23年3月31日までの時限立法的な
ものです。
当初の期限は平成22年3月31日まででしたが、期間が再延長されました。
しかし、今後についても同じような延長措置があるかどうかはわからないので、利用を
お考えの方は期限内での申込みをした方がよいと思われます。
【 「使える・使えない」あなたはどっち? 】
この制度の利用にあたっては
「廃業時の負債が、新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みのある」
ことが重要な要件となっており、これを満たせるかどうかがポイントとなります。
では、具体的には、この要件はどのような意味なのでしょうか?
この「廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みのある」とは、
「 廃業時に負っていた負債が現在も残っている場合に、それがある程度の期間内
で整理または完済できる見込みがある 」
ということを意味します。
したがって、破産や民事再生などのように、それまでの負債が全く免除、または相当程度に
までカットされているような場合にはこの要件に該当する可能性があります。
しかし、それとは異なり、銀行からのリスケジュール支援を受けている場合や、特定調停な
どによって単に債務が一時的に棚上げされ、のべ払いとなっているような場合には、すぐの
利用は難しいものと思われます。
また、この要件について、日本政策金融公庫の担当者は次のように語っています。
「 この制度を利用するにあたって、過去の事業による負債が残っているのは仕方
ないが、現時点においてその返済について、債権者と話し合いができており、
そしてある程度合理的な金額の返済が行われていて、完済のめどが立っている
ことが原則となる。 」
このことから、この再チャレンジ支援融資を利用しやすい方、そうでない方については、
次のような例を考えることができます。
再チャレンジ支援融資を利用しやすい方
◆ 破産者で免責決定を受けている方
◆ 経営上の理由により、事業を廃業したが特段に負債のない方
◆ 廃業し負債もあるが、それが大きな金額ではなく、現在も弁済していて、近い将来に
完済の見込みのある方。
◆ 廃業により負債を負ったが、民事再生手続き等により大幅な債務カットを受けた方
ま た は
当事者間の話し合いにより大幅な債務の放棄を受けた方
利用が難しいと思われる方
◆ 廃業後の負債が多額で、その返済に長期の時間がかかるような場合
◆ 破産宣告を受けたが何らかの理由により免責決定が受けられず、引き続き多額の負債
の支払い義務を負っている方。
◆ 債務の返済について、金融機関と話し合いはできているものの、実際には返済が行え
ていない方。
◆ 本人の事業以外の理由による負債(例えば、倒産会社の第三者保証人であったために
保証協会から、本人にかわって弁済を求められている場合など)を負っている方。

一方、信用保証協会でも2007.8.6から「再挑戦保証制度」の取り扱いを開始しています。
この場合にも一定の要件はありますが、過去に「破産歴」や「廃業経験」があっても、
再チャレンジに必要な融資(保証)を受けることができます。
再挑戦保証制度の主な内容
【 対象者 】
過去に経営状況の悪化により個人事業を廃止もしくは、経営していた会社を解散した経
験を有する方で、次の(1)~(4)に掲げる要件を満たす方。
ただし、廃業もしくは解散の日から5年以内に申し込んだ方に限ります。
① 現在、事業を営んでいない個人であって、1ケ月以内に新たに個人事業を開始す
る具体的計画を有する方・・・つまり、個人事業で再開業前の方
② 現在、事業を営んでいない個人であって、2ケ月以内に新たな会社を設立し、当
該会社が事業を開始する具体的計画を有する方・・・つまり、法人で設立前の方
③ 事業を営んでいない個人が事業を開始し、その後5年を経過していない個人事業
主の方・・・つまり、個人事業ですでに再開業後の方
④ 事業を営んでいない個人により設立された会社であって、その設立の日以後5年
を経過していない会社・・・つまり、法人で設立後であって再開業後の方
但し、いずれの場合でも、日本政策金融公庫の再チャレンジ支援融資の場合と同様、過
去に廃業した事業の負債がある場合は、その負債が整理される見通しがなければ対象と
なりません。
【 融資の内容 】
■ 保証限度額:1,000万円
■ 保証料:各信用保証協会所定の信用保証料が必要となります。
■ 金 利:金融機関の所定金利による
■ 保証期間:保証期間 10年以内
■ 担保・保証人条件:原則として法人代表者を除いて第三者保証人は不要。
また、物的担保も不要。
■ 申込み : 金融機関を通じて申込むことになります。
【 利用上の注意について 】
この保証制度をケースごとに分けてると次のように考えられます。
① 過去の廃業時の債務がなく、再び事業を予定しているまたはすでにしている方
このような方については特に問題なく、この制度を利用することが可能です。
② 過去の廃業時の債務をまだ負っていて、再び事業を予定している方
このような方であっても、過去の債務が過大でなく、返済の見込みがたつ場合には
この制度を利用することが可能です。
③ 過去の廃業時の債務をまだ負っていて、再び事業をしている方
たとえば、過去に代位弁済を受けており、信用保証協会に対して債務を負っている
場合であっても、再開後の事業が順調であるような場合には「求償権消滅保証」を
利用して過去の債務についての保証を受けると同時に、この「再挑戦保証制度」ま
たは「一般保証制度」を併用することにより、運転資金や設備資金についてのニュ
ーマネーの保証を受けることができる場合があります。
なお、この制度では信用保証協会が行うのはあくまでも保証であり、融資そのものでは
ないのですが、信用保証協会の保証が得られた場合には金融機関はほぼまちがいなく融
資を行うので「保証を受ける」=「融資を受ける」と考えてよいかと思います。
以上をまとめると、この「再挑戦保証制度」を利用するにあたっては
・ 廃業歴がある方の中でも、過去の事業に関する負債がない方が有利。
・ 仮に、過去の事業に関する負債がある場合でも、これから新たに事業を再開しよう
とする方よりも、すでに事業を開始しており、売り上げや利益が見込める方のほう
が有利。
・ 廃業時の負債の整理については、私的な整理ではなく、できるならば再生支援協議
会などの公的な機関を利用した上で、その後の整理についてのお墨付きをもらって
いる方が有利。
ということになります。
以上のように現在では、廃業歴等のある方に対しても公的機関による融資体制が整いつつあ
ります。
しかし、表面的な要件が整えば必ず融資や保証が出るというわけではなく、それなりに高い
ハードルがあるものと思われます。
しかし、一見、利用が難しいようなケースによっては融資がでる場合もありますので、もし、
気になる方は一度ご相談ください。