敷金返還の基礎知識について
「出て行くときには、あれも直せ!これも払え!」 こんな特約有効?
賃貸借契約の中で頭を悩ますことが多いのが、上記のように借主側に一方的に不利な特約の
存在ではないでしょうか?
一見するとバランスを欠いた特約であっても、それが強行法規や公序良俗に反するものでな
い限り、「契約自由の原則」から契約自体は有効とされるので、現実にはなかなか判断の難
しいところです。
この点につきガイドラインでは、賃借人に不利な特約が有効なものとなるためには、次
の要件の全てを満たすことが必要としています。
(特約の有効要件)
・特約の必要があり、かつ、その内容が暴利的でないなどの客観的、合理的理由が
存在すること。
・賃借人が特約によって、通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことに
ついてキチンと認識していること。
・賃借人が特約による義務を負担するという意思表示をしていること。
つまり、この3つの要件がクリアできない特約は、裁判で無効と判断される可能性が高
いと考えられます。
また、「小規模な箇所の修繕については、借主がこれを行うものとする」とする特約(小規
模修繕の特約)がある場合については
「小規模修繕の特約」がある場合でも、修繕を行うかどうかは借主の自由であり、こ
れにより借主は修繕義務を負うわけではない。
従って、この特約があることを理由に、原状回復費用として、借主が入居中に行わな
かった小規模修繕の費用を請求することはできない。
という判例が出されており、現在はこの考え方が定着しています。
見逃すな!グレードアップのからくり。
皆さん、部屋のグレードアップってご存知でしょうか?
例えば、皆さんが部屋を退去した後に、新しくなった部屋を見る機会があったら、あまりのキ
レイさにビックリするかもしれません。
通常、貸主は新しく部屋を貸すときには、そのままでは貸しにくいためクリーニングを
した上で、目だったキズや汚れがある箇所については(もしくは、何もなくとも)設備等
を最新のものに取り替えてしまうことがあります。
これが、退去後におけるグレードアップというものです。
でも、このお金ってどこから出てるのでしょうか?
答えは次のいずれかです。
① 大家さんが自腹を切っている。
② どうせ出て行ってしまう人間の敷金から差っ引いている。
正解は①といいたいところですが、残念なことにこれまでは圧倒的に②のほうが多かったよう
です。
先ほどの補修費の負担の考え方によれば、
グレードアップに伴う費用の増加分は、当然貸主側が負担すべきものであり、
そもそも、出て行く人間には何の関係もない(負担の必要なし)。 のです。
皆さんも、退去の際には十分に気をつけましょう。(対策については次章を参照。)
先か後かそれが問題!敷金返還請求権の発生時期について
敷金が戻ってくるとしても、具体的にそれっていつのことなのでしょうか?
判例は、敷金返還請求権の発生時期につき建物の明渡し後としています。
つまりは、契約が終了しただけではダメで、部屋を明け渡して初めて敷金の返還を請求でき
ることになります。
また、同じく判例によれば、敷金返還請求には同時履行の抗弁権はないとされているの
で、退去と敷金の返還を引き換え条件(「敷金が戻らないから退去しない」など)とす
ることはできません。
ついでに知っておこう! 家賃の本当の中身
住んでいるからは、イヤでも支払わざるを得ないのが毎月の家賃です。
でも、意外と正確にその中身を知っている人は多くありません。
ちなみに、不動産鑑定評価基準では、家賃の中には
「減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料、貸倒れ準備費、空室等による過失
相当額を含む」
とされています。
つまりは、これからもわかるように、家賃をシッカリとっていれば、基本的に大家さんは維持
管理にかかる費用のほとんどをこの中でまかなうべきだということがわかります。
何が問題か?敷金返還の現場
いろいろと書いてきましたが、結局のところ、敷金返還のトラブルで借主側にとって一番の障
害となるものは何なのでしょう?
様々な意見があると思いますが、当サイトが思うに、借り手を弱気にさせているその最大の原
因は、大家(もしくは業者)から提出される見積もりの内容が一般の人にはわからないというこ
とではないでしょうか?
たとえ、どんなバカ高い請求であっても、その一般的な相場についての知識がなければ「高い!
安い!」は個人の感覚論の域を出ないので、「素人がなに言ってんだ!」とのプロの意見に勝
てないのです。
次の章では、ハッキリ文句を言うための最大の手段、「原状回復費用の相場と見積りの方法」
を公開いたします。